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フランクリー・スピーキング:「世界的な食糧危機は中東に大きな影響を与えることに」とSmartKasのCEOが語る

(AN photo)
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13 Jun 2022 08:06:10 GMT9
13 Jun 2022 08:06:10 GMT9

アラブニュース

ドバイ: 迫り来る世界的な食糧危機は中東と北アフリカに「大きな影響」を与えることになるだろう。この地域では人口と経済がロシアとウクライナの紛争によって「致命的な打撃」を受けている。

こう語るのはテクノロジー起業家でアグリテック企業SmartKasのCEO、デビッド・メスザロス博士だ。同社は人工知能、ドローン、ロボティクスを用いてオランダに世界最大のスマートファームを構築している。

「もし今日のことや今後数週間ということならば、大きな影響があります」と中東地域や世界の主要な政策立案者とビジネスリーダーにビデオインタビューを行う番組「フランクリースピーキング」の司会者であるケイティ・ジェンセン氏に対し同氏は述べた。

さらにメスザロス氏はUAE、カタール、サウジアラビアに食糧を供給する「メガ・スマート・ファーム」の建設構想も明らかにした。このメガ・スマート・ファームは再生可能なエネルギーと水だけを使い、完全にサステナブルかつ自律的に運営される。

大局的な見地では世界は100億人を養うことができるが、現在の食糧システムではそれは無理だと同氏は述べた。同氏は躊躇なく「私たちは今後10年ほどの間に食料を食べ尽くしてしまうでしょう」と述べた。

このコメントは世界の飢餓が史上最悪レベルを更新していると国連が警告を発したことを受けての発言だ。国連の警告は食料価格が戦争勃発以来30%上昇し、世界中で食料輸出が大幅に減少し、多くの国々でインフレが急進している状況を踏まえたものだ。

インタビューの中で、メスザロス氏は食糧危機が発生している本当の理由、誰が一番被害を被り、なぜ新しいテクノロジーが解決策となり得るのか、そしてそれがすぐに実現できるのか、といったことに関して自身の考えを語っている。

現在食糧難に直面しているMENA諸国について、同氏は次のように述べている。「小麦や米、あらゆる種類の穀物(と肥料)。。。これらの供給を輸入に強く依存しているため経済、特に農業経済が完全に崩れてしまっています。値上がりした食料をその価格で購入する以外、MENA諸国の政府には食料需要を満たす方法がないのです。」

しかし、幸いなことにメスザロス氏によれば正念場を迎えるのは5〜10年後なので、まだ手遅れではないとのことだ。「もし今、まさに今この時点でこれを変えるという決断をすれば、今後6〜12ヶ月以内に自国の自然資源を動力源とし、自給用の食糧を生産するスマートファームが出現するのを目にすることができるかもしれません。」と同氏は語った。

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長はロシアが発展途上国に対して食糧供給を「ステルスミサイル」として利用していると非難しているが、メスザロス氏は危機の原因はウクライナ危機だけでなく、もっと深いところにあると考えている。

「すべてをロシアの責任にするのは少し無理があると思います。既に一年以上続くサプライチェーンの危機があったことは誰もが知っていることですし、また、今もパンデミックが続いており、近々ヨーロッパとMENA地域に新たなコロナの波がやって来るとの噂もあります」と述べた。

「この問題が始まった時まで時計の針を戻せば1960年代まで遡ることになります。今日の世界の人口は1960年代の2.5倍になっているのです。」

世界的な食糧危機は「発生することが長年に渡り想定されていた現在進行形の問題でありながら、これまで真剣に取り組まれることはありませんでした」とメスザロス氏は言う。その一例として肥料の使用を挙げている。肥料の使用量は1960年代から8倍に増えたが「収穫逓増のため、肥料の効果は95%も低下してしまっています」と語っている。

同氏はこの状況を保険に加入せずに事業を経営することに例えた。「何も悪いことが起きず上手くいくように願うだけで、実際に悪いことが起きてしまったようなものです。そして、こうした壊滅的な事態が起こる頻度は増すばかりなのです。」と同氏は語った。

とはいえ、メスザロス氏は世界最大の肥料輸出国であるロシアの役割や、ロシアとウクライナが合わせて世界の小麦供給の30%、ひまわり油の70%を供給していることの重要性を軽んじてはいない。世界の食糧供給は「極度のストレス下にあり、ロシア・ウクライナ周辺地域だけでなく世界の食糧供給に大打撃を与えている」と語った。

「問題は時代遅れの、非常に古く陳腐化した食糧システムに私たちがますます依存度を強めていることなのです。この食糧システムは畑作であり、そのため、再生不可能な側面があるのです」とメスザロス氏は話す。

「肥料はリン系、窒素系、カリウム系などの種類によらず、常に新たなニーズがあります。そうした肥料はまだまだ必要で、たったの数週間や数カ月で食料システムが切り替わることはあり得ません。」

「これこそが、(ロシア・ウクライナ)戦争が現在の非サステナブルで非再生可能な食料システムが続いていくのはそもそも無理なのだということを我々人類がようやく認識するようになるきっかけになると考える人たちがいる理由なのです。」

メスザロス氏は自律的スマートファームの熱心な提唱者で、オランダに世界最大規模のものを作ったことで知られている。しかし、実際のところにどんなものなのだろうか?

同氏は次のように説明する。「ご自分が畑を所有していると想像してみてください。そこでイチゴを栽培するとします。通常、1ヘクタールの土地で10〜15トンの収穫があります。同じ広さの土地でSmartKasが10層または12層の垂直農場を作ると2,000トンを超える量を栽培できます。つまり高品質で無農薬かつサステナブルな手法で栽培された新鮮なイチゴを約200倍も栽培できるのです」。

「それだけでなく、1月1日から12月31日まで年中無休で栽培でき、販売する街のすぐそばで栽培できるのです。

「私たちは水をリサイクルし、太陽光や風力など利用可能なエネルギーはなんでも利用しています。そして全て無農薬で栽培し、地元で販売します。つまり中間マージンをカットし、輸出入もせず、ケタ違いに多くの量を生産しているのです。私はここアムステルダムの拠点におりますが、ロンドンにも拠点があり、ハンガリーには研究開発施設、そして今ブラジルに巨大なビニールハウスを建設中です。」

また、湾岸協力会議諸国の数カ国向けの「メガファーム」建設構想に関し、同氏はUAE、カタール、サウジアラビアの政府関係者や個人と協議中であると明かした。「私たちは、特にその湾岸協力会議3カ国国向けに、1つの施設で3カ国の食料需要に応えられるような巨大なメガ施設を建設できると考えています。その施設は完全にサステナブルかつ自律的に稼働し、再生可能なエネルギー源と水だけを使用します。」と同氏は語った。

メスザロス氏は「この三角形方式では、この3カ国の1つが三角形の長さが等しいそれぞれの一辺に相当し、そして自律走行する電気自動車(基本的にはトラック)を導入することで、これら3カ国それぞれの最大の都市に果物や生鮮野菜を供給するのです」というビジョンを思い描いている。

プロジェクトの立地について同氏は次のように語った。「気候、送電、利水などの観点を踏まえ最も理想的な場所を選びます。」

総コストについては9億ドルから11億ドル、生産能力に関しては 「約5万トンの果物と生鮮野菜で、我々の調査によれば、この3カ国の果物と生鮮野菜の供給には十分すぎるほどです」との考えのようだ。

メスザロス氏は太陽エネルギーを大いに活用する考えで、同氏は「これらの国では日照が十分にありますし、土地があって利用できるし、太陽光発電(PV)パネルには高架式や透明なものなど新しい技術がどんどん出てきています。」

SmartKasでは「対象面積あたりの発電量をさらに増やせる」透明なPVを実験していると同氏は話し、「ロボットやストリング、ドローンを自動化し、人間が介在せずともパネルから(埃や砂を)定期的に清掃することができるようになっています。」と補足した。

水の供給に関してはいくつかの解決策があると同氏は言う。「第一に、システム自体が密閉されているので何でもリサイクルできます。しかし、リサイクルも完璧ではなく多少のロスが発生します。そこで、製水装置を2基導入する予定です」と同氏は語る。

「一つは海水淡水化プラント、もう一つは空気中の水蒸気を抽出して水を作る装置です。私たちは沿岸部ですでに現地調査を実施済みです。沿岸部の大気中の水蒸気から1基あたり1日4〜6千リットルの水を抽出可能です。」

SmartKasには「すでにこの全3カ国に合意済みの投資家がいます。」そしてヨーロッパの投資家やヨーロッパの公共団体とも協議中だとメスザロス氏は話す。「今後2年以内に初期段階の開発プレ・エンジニアリングと設計を終え、その後に建設の話ができると考えています」と同氏は述べた。「今後2年以内は絶対に無理ですが、このプロジェクトが立ち上がるのはおそらく(今から)3〜4年後くらいになると思います。」

最後に、メスザロス氏は2050年までに100億人になると予測される世界の人口を養うために世界が講じるべきと考えるいくつかのステップの概要について説明した。

「1つ目は、肥料への依存と非効率な農法をやめることです。」

「すべての国にAIが運営する自律型農場が必要なわけではありません。小さなところから始めればいいのです。ドローンを使って農薬をうまく散布し、特定のホイル技術やポリトンネル技術(スペインやモロッコで活用されている)を利用して作物を保護し、徐々にすべての国が移行すればよいのです。」

「しかし、本質的にはテクノロジーと革新的なソリューションを活用することが、世界の食料安全保障の実現に向けた鍵なのです。」

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