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国連、シリアの人びとは戦争開始以来、最悪の冬に備えている

2022年10月18日、レバノンのベカー渓谷にある非公式難民キャンプで、子どもを連れて歩くシリア難民女性。(ロイター)
2022年10月18日、レバノンのベカー渓谷にある非公式難民キャンプで、子どもを連れて歩くシリア難民女性。(ロイター)
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26 Oct 2022 09:10:22 GMT9
26 Oct 2022 09:10:22 GMT9
  • 最新の報告書は、コレラの流行と燃料価格の上昇により、人道支援の必要性がこれまでになく高まっていると警告する。人びとは食料か暖房のどちらかを選択することを余儀なくされている
  • 米国大使は、非拘束者や行方不明者の問題に対処するための新たな独立機関の設立を呼びかけた

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク: 25日、国連安全保障理事会の理事国は、シリア北西部で起きている対立で、過去2カ月間だけでも、35人の子どもを含む、90人以上の民間人が死亡したことに遺憾の意を表した。

最新の国連報告書によると、シリア全県でのコレラ流行と「暖房か食事かを選択すること」を家庭に余儀なくさせている燃料価格の高騰により、戦争で荒廃する同国への人道支援の必要性がかつてないほど高まっている。

シリアの人びとが再び厳しい冬を迎えるにあたり、生存のために600万人が支援を必要としており、昨年に比べ30%の増加となる。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、食料不足は「信じがたい」ほどの深刻な状況にあると述べ、シリアの人びとは2019年に購入できた量の6分の1の食料しか買うことができないと説明した。

シリアの最新情勢に関する報告書について討議する安全保障理事会の会合で、理事国はシリアの刑務所で「日常的に拷問を受け、殺害されている」収容者の数や、同国での強制失踪の数に「驚愕している」と表明した。

理事国は紛争当事者に対し、国連が仲介する憲法委員会の政治利用をやめ、決議第2254号に沿った真剣な交渉に戻るよう求めた。

同決議には、恣意的に拘束されたすべての人びとの解放、全国規模の停戦、すべての地域および必要とするすべての人びとに人道支援を自由に届けられるようにすること、難民の故郷への自主的帰還、新憲法に基づく自由選挙などの要求が含まれている。

ゲイル・ペデルセン国連シリア担当特使は、これまでの政治プロセスが「シリアの人びとのために成果をあげておらず、人々は苦しみ続けているのは急性的な暴力だけではない」と遺憾の意を表した。

ペデルセン特使は、全国的に「戦略的膠着状態」が続いているにもかかわらず、安全保障理事会のテロ組織リストにも名を連ねるハヤット・タハリール・アル・シャムやダーイシュといった武装反政府グループ間の対立、北西部のイドリブやアザーズで続く新政府派による空爆、北東部でのトルコから支援を受けるシリア民主軍と反政府武装勢力による相次ぐドローン攻撃と相互の砲撃など、紛争の状況は非常に活発だと指摘した。

加えて、イスラエルもダマスカスやアレッポの国際空港など、シリア国内の標的に対して攻撃を行っている。

ペデルセン特使が「戦争が始まって以来最悪の経済危機」と表現する事態にシリアの人びとが耐えている中で、こうした紛争の状況が続いている。

特使は、「この冬、大多数の人々の状況はさらに悪くなる」と警告した。

同特使は、救命支援の取り組みを強化するよう求め、すべての当事者に対して、支援を必要とする地域や人びとへの自由なアクセスを人道支援従事者に認めるよう呼びかけた。

被拘束者の問題も事務総長の報告書の中で大きく取り上げられた。

ペデルセン特使は、国連はシリア全土での恣意的な逮捕の報告を引き続き受けていると述べた。

同特使は、「一方で、大統領による恩赦から半年経つが、報告すべき新しいことは何もない」とも指摘し、「私たちの継続的な取り組みにもかかわらず、公的な情報は得られず、独立した監視の設置も進んでいない」と説明した。

以前、ペデルセン特使は、拉致被害者、非拘束者、行方不明者の問題への取り組みが、外交を本格的に復活させるために欠かせない重要な「信頼醸成措置」であると述べた。

また、同特使は、憲法委員会を年内にジュネーブで再開することを目指して、政府、反体制派、市民組織の各当事者間の接触を仲介する同特使の事務所の取り組みについても言及した。

シリア政府は最近、新たな協議への参加を拒否したが、ロシアがジュネーブを開催地とすることに異議を唱えたことによるものとみられている。

ロシア政府は、スイスの首都ジュネーブは公平な開催地とは言えないと主張している。

スイスは、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、欧州連合(EU)の対ロシア制裁を支持している。

英国と米国は、ロシアが憲法委員会の協議を停滞させていると非難している。

協議の開催地をめぐって意見が対立しているが、ペデルセン特使は憲法委員会の再開を妨げる本当の問題は、実質的な問題に関する進展がないことだという見解を示した。

前回の憲法委員会の協議では、参加者たちは憲法原則に関する提案の修正について有意義な議論を行うことができなかった。

ペデルセン特使は、憲法委員会の共同議長を再び招集し、「より速いペース、より良い作業方法で、より実質的な内容を目指すという、妥協の精神で取り組む 」という政治的意志を引き出すための努力をしていると述べた。

米国使節団の国連特別政治問題担当予備代表を務めるロバート・ウッド大使は、米国はシリアの非拘束者と行方不明者の問題に対処するための独立組織を設立することを支持するという見解を示した。

同組織は、「アサド政権や(ダーイシュなど)その他の紛争当事者によって行方不明になったシリアの人びとの安否を明らかにするという人道的使命を担う」ものだ。

ウッド大使は、「行方不明となった何千人ものシリアの人びとの居場所と状況を確認し、恣意的に拘束された人々を開放することは、シリアにおける安定的かつ公正で、永続的な平和を達成するために欠かせない。

そして、この仕事に取り組むためには新しい組織が必要だと考えている」と続けた。

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