• 自国通貨が最安値を記録する中、一般労組は最低賃金の引き上げを訴えている

ナジャ・フーサリ

ベイルート：レバノンでは今、医薬品と粉ミルクが急速に不足しており、配達が停止し、数日以内に供給がなくなる見込みである、と同国の薬剤師団体のトップが警告している

ジョー・サローム氏は、為替レート危機により、薬局への医薬品や乳児用粉ミルクの配送がほぼ完全に停止しているという。

「救いは、新しい大統領を選出することから始まる。それによって、財政と経済の最低限の安定を確保するとともに、復興への道を歩み、特に医療分野での政策実施計画を策定できるよう、憲法と立法に基づいた生活を回復するのだ」。同氏はこのように続けた。

「さもなければ、数日以内に、医薬品部門全体が崩壊し、強制的に業務が停止させられることは避けられないだろう」

サローム氏がこう警告する中、経済学者のルイス・フバイカ氏はアラブニュースの取材に対し、レバノンの自国通貨がさらに暴落する方向に向かっていると述べた。

レバノン通貨の価値は、ここ3年間で徐々に下落してきている。

「政治的展望は完全に閉ざされており、レバノン市場は小さい。これは、ドル需要への圧力がかかり、為替レートに影響することを意味する」。フバイカ氏はこう語った。

「レバノンでは、誰も自分の持つドルを売っていない。レバノンを訪れているのは、休暇をここで過ごしている国外居住者のレバノン人たちだ。彼らは少額のドルを両替するか、またはレストランや商店で直接、ドルで支払っている」

エコノミストであるフバイカ氏は、「確かに政治状況は変わらないが、レバノンは日ごとにますます沈んでいる。大統領も選ばず、政府も作らず、改革も実施しない。自国通貨の価値の劇的な下落がその証拠だ」と述べた。

また、同氏は、中央銀行ではもはや事態を収拾できなくなったと付言した。

同氏は、レバノン中央銀行の準備金は発表によると100億ドルだが、もっと少ない可能性もあるとし、もはや事態を解決するには十分ではないと強調した。

「我々は2週間ごとに、がん治療薬や小麦の補助金付きでの購入に関する問題に直面している。もし、中央銀行が為替レートを制御できるのであれば、すでにそうしているはずだ」（フバイカ氏）

同氏は、今回の危機は、中央銀行が解決するにはあまりにも大きくなり過ぎたと指摘した。

レバノン経済委員会は、一般労働組合との協定の内容を承認し、最低賃金を250万レバノンポンド（1,650ドル）から450万レバノンポンドに引き上げるとみられる。交通手当についても1日9万レバノンポンドから12万5000レバノンポンドに引き上げ、学校手当、家族手当も増額するとみられている。

しかし、フバイカ氏は、最低賃金の引き上げによってこの問題に対処すればインフレが進むと強調し、為替レートがまもなく70,000LBP（レバノンポンド）またはそれ以上になる可能性があると警告した。

「それでは解決にならない。自殺行為だ」（フバイカ氏）

一般労働組合は、対ドル為替レートが1ドル＝36,000LBPだった時に、最低賃金を2000万LBPに引き上げることを要求していた。

レバノンポンドの価値は、21日に過去最低を記録した。

為替レートは正午に47,000LBPに達し、わずか2時間で1,500LBP下落した。市民の間では今後の物価高騰を懸念する声が上がっている。

この下落は、レバノン中央銀行が、商業銀行がSayrafa為替プラットフォームで米ドルを無制限に購入することを認める通達を、1月末まで延長したことを受けたものだ。

この為替レートの下落は、燃料価格に反映された。

20リットル入りのガソリンの価格は20,000LBP、軽油は21,000LBP、家庭用ガスは13,000LBPそれぞれ値上がりした。

燃料販売業者団体の代表であるファディ・アブ・シャクラ氏は、次のように述べた。「私たちは今、レバノン市民に対する犯罪を目撃している。彼らは、世界的な原油価格下落の恩恵を受ける権利を奪われたのだ」

さらに、次のように続けた。「私たち販売業者は、燃料の価格を負担するために並行市場からドルを購入している。中央銀行もドルを購入しているので、実質的に自分の国の中央銀行と競争していることになる。これは受け入れがたいことだ」

為替レートは2023年の初めには50,000LBPに達し、同国で政治的打開策が打ち出されなければ、数ヵ月以内に100,000LBPに達する可能性もあると予想されている。

現在の為替危機の原因は、闇市場を牛耳る密輸業者やマフィアにあるとの指摘もある。

国連の推計によると、現在、レバノンでは10人のうち8人が貧困ライン以下で生活している。