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パキスタンで警察官の集まるモスクに自爆攻撃、死者59人・負傷者157人

1月30日、パキスタン北西部の都市ペシャーワルのモスクで自爆テロが発生し、礼拝に集まった人々から多くの死傷者が出た。(AP)
1月30日、パキスタン北西部の都市ペシャーワルのモスクで自爆テロが発生し、礼拝に集まった人々から多くの死傷者が出た。(AP)
2023年1月30日、パキスタンのペシャワールで陸軍兵士と警察官が、警察署の正門の所で、爆弾が爆発した現場に駆けつける救急車が通れるように道を空けている。(AP)
2023年1月30日、パキスタンのペシャワールで陸軍兵士と警察官が、警察署の正門の所で、爆弾が爆発した現場に駆けつける救急車が通れるように道を空けている。(AP)
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30 Jan 2023 11:01:57 GMT9
30 Jan 2023 11:01:57 GMT9

レフマト・メスード(アラブニュース・パキスタン)

  • パキスタン・タリバン司令官が関与を認めるが、広報官はこれを否定
  • シャバズ・シャリフ首相は負傷者をペシャーワルの病院に見舞い、テロを計画した者たちへの「厳しい措置」を誓った

ペシャーワル:1月30日、タリバンによる自爆攻撃がパキスタンの厳重警備された敷地内のモスクで起こり、死者59名以上と150名を超える負傷者が出た。

警察によると、犯人は治安部隊員が警備に当たっていた複数のバリケードを通過して、北西部の都市ペシャーワルの警察署やテロ対策部隊がある厳重警備の敷地内に侵入した。

「自爆による攻撃だった」とペシャーワル警察ムハンマド・イジャズ・カーン署長は述べた。

当局によると、犯人は数百人が礼拝のために列に並んでいた瞬間に装置を起爆した。「爆発物の痕跡を発見した」とカーン署長は説明した。

敷地でもっとも堅牢とされる場所を犯人がすり抜けた以上、警備体制に不備があったことは明らかであると署長は述べた。

これほどの厳重警備を犯人がどのように突破したのか、内部に協力者がいたのか否かについて捜査が行われた。

カーン署長によると、モスクには約400人が集まっており、死者の大半は警察官である。

ペシャーワル地区のリアズ・メスード行政官はアラブニュースに、以下のように語った。「このモスクでの礼拝者の大半は警察官なので、死傷者の9割は警察関係者だと思われる」

ハワージャ・アースィーフ国防相によると、犯人は礼拝者の最前列にいた。爆発時にモスクにいたアフマド・カーン巡査の話では、爆風でモスクの屋根が崩れ落ちたという。「ズフルの礼拝の時間でした。私は爆発が起きた時2列目にいましたが、モスクの屋根が崩落したために、多くの人が下敷きになりました。私はどうにか抜け出すことができ、軽傷で済んだのです」

また別の負傷した警官、ムシュタク・カーン氏は次のように話した。「耳をつんざくような爆発音がして、何が起きたかも分かりませんでした。爆風で、私はベランダまで飛ばされました。壁や屋根が崩れ落ちてきました。命を救ってくださった神に感謝します」

目撃者によると、警察と救助隊が負傷者を搬送しようと急ぐ中、現場は混乱を極めた。爆発でモスクの上階が崩落したため、数十人ががれきの下敷きになった。テレビの生中継の映像では、救助隊が崩落した屋根を切断して、閉じ込められた人々を救い出そうと奮闘する様子が分かる。「あと何人が閉じ込められているかは不明です」とハジ・グラム・アリ州知事は話した。

タリバン司令官が犯行声明

パキスタン・タリバン運動(TTP)のサルバカフ・モフマンド司令官はツイッターに投稿して、爆破事件への関与を認めた。

だがその数時間後、TTPのモハメド・フラサニ広報官はモスクや神学校、宗教的場所を標的にすることはTTPの方針に反するとして自爆事件への関与を否定し、TTPの政策ではこのような事件を起こした者は処罰の対象となると主張した。広報官の声明では、TTPの司令官が関与を認めた理由については触れられていない。

ペシャーワルはカイバル・パクトゥンクワ州の州都で、パキスタンのタリバンの一大拠点となっており、武装勢力による攻撃が頻繁に起きている。

昨年11月に、5月に政府との間で結んだ停戦をTTPが破棄して以降、攻撃は増加している。30日の爆破は2022年3月に金曜礼拝の最中にダーイシュの自爆テロにより、58名以上の死者が出て以来、ペシャーワルで最悪の悲劇となった。

「想像もつかない」

パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は以下のように述べた。「想像もつかないほどの大きな悲劇です。これは、パキスタン国家への攻撃に他なりません。国中が悲嘆に暮れています。テロが我々の直面する最大の敵であることは間違いありません」
パキスタンのアメリカ大使館は「恐ろしい攻撃の犠牲となった方々の家族と友人に深い哀悼の意」を表明した。

シャリフ首相は国民、とりわけ自身が率いる与党パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ・シャリフ派の支持者に対し、事件の負傷者のために献血するよう呼びかけた。

「ペシャーワルのレディ・リーディング病院に連絡を取り、かけがえのない命を救う手伝いをしてください」と首相はツイッターに投稿した。

「テロリストたちは、パキスタン防衛を担当する機関を攻撃することで、恐怖に支配された雰囲気を作り出そうと悪意ある試みをしています。この試みは、国民と国家の団結の力の前に挫折するでしょう」ペシャーワルで出した声明の中で、首相はこのように述べた。

「パキスタンはテロとの戦いで、多大な犠牲を払ってきました。国に殉じた人々の犠牲を無駄にはしません」と首相は続け、テロ対策部門と警察の能力と効率性を高めると誓った。

爆発時にモスクにいたアフマド・カーン巡査の話では、「ズフルの礼拝の時間でした。私は爆発が起きた時2列目にいましたが、モスクの屋根が崩落したために、多くの人が下敷きになりました。私はどうにか抜け出すことができ、軽傷で済んだのです」

パキスタンのペシャーワルで、30日の爆発事件の現場に集まる治安当局者と救助隊員。攻撃は2022年3月以来ペシャーワルでは最悪の規模となった(AP)

警察官ザファール・カーン氏によると、救助隊員はがれきの下に閉じ込められている人々を助けるために、積み重なったがれきを取り除かなければならなかった。

爆発時モスク内にいたミーナ・グル氏は、どうやって無傷で脱出できたか、自分でも分からないと話した。38歳の警察官である氏は、爆発音に続いて人々の叫び声を聞いたという。

警察当局者のシディク・カーン氏によると、犯人は礼拝に集まった人々の中で自爆した。

警察および政府高官が警察官30名の葬儀に参列し、その他の遺体の埋葬の準備も進められた。棺はパキスタンの国旗で包まれ、遺体は遺族に埋葬のため引き渡される。

テロの急増

国民の大半がスンニ派イスラム教徒であるパキスタンでは、パキスタン・タリバン運動が政府軍との停戦を昨年11月に破棄して以来、武装派組織による攻撃が相次いでいる。

今月初め、TTPはメンバーの1人がパキスタン軍の諜報機関、軍統合情報局のテロ対策部門のトップを含む2人の情報将校の射殺に関与したと認めた。治安当局者は30日、射殺犯はアフガニスタンとの国境に近い北西部で銃撃戦の末殺害されたと明らかにした。

TTPはアフガニスタンのタリバンの分派であるが、アフガンの組織と同盟関係にある。過去15年にわたり、パキスタン国内で反政府活動を続け、イスラム法のより厳格な適用、政府の拘束下にあるメンバーの解放、長年拠点としてきたカイバル・パクトゥンクワ州でのパキスタン軍の勢力縮小を求めてきた。

隣国アフガニスタンでは、タリバンは2021年、20年にわたる戦争の後アメリカとNATOの部隊が撤退した際に権力を掌握した。

2022年に起きた未曽有の大洪水では、死者1,739人、倒壊家屋200万以上の被害を出し、ある時点では国土の1/3もの面積が水没した。パキスタン政府がその対策に取り組む最中に、TTPとの停戦が破棄された。

アフガニスタン外務省は声明の中で、「ペシャーワルのモスクでの爆発で多くの命が失われ、多くが負傷したことに悲嘆」の意を表し、礼拝中の攻撃はイスラムの教えに反するとして非難した。

国際的批判

イスラマバードのサウジ大使館、アメリカ大使館も攻撃を非難する声明を出した。後者は「我が国はパキスタンとともに、あらゆる種類のテロを糾弾する」と述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は爆破を礼拝の場を標的としたことから「特に忌まわしい」と述べたと、国連のステファン・ドゥジャリク報道官は発表した。

財政状況の厳しいパキスタンは深刻な経済危機に直面しており、デフォルトを回避するため、国際通貨基金(IMF)からの資金11億ドルの支払いを求めている。これは総額60億ドルの援助計画の一部に当たるが、ここ数か月間、援助再開に関するIMFとの交渉は停滞している。

パキスタンのイムラン・カーン前首相は爆破を「テロリストによる自爆攻撃」と呼んだ。カーン氏はツイッターに以下のように書き込んだ。「遺族の方々に祈りと哀悼の意を捧げる。情報収集の体制を強化し、増大するテロの脅威と戦うべく、警察組織を整備しなければならない」

シャリフ政権は昨年4月、カーン氏が議会で不信任決議を受けて失職した後に成立した。以来カーン前首相は早期の選挙実施を求めており、自身の失職は違法であり、アメリカの支援を受けた陰謀だと主張してきた。アメリカ政府とシャリフ首相はともにカーン氏の主張を退けている。

(APとの共同)

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