
ベイルート:シリアを襲った、死者を出した地震から2週間が経過したが、内戦で荒廃したシリアの北西部の反政府勢力支配地域には国連の援助物資が少ししか届いておらず、その遅さが激しい怒りや憤りを生んでいる。
そのマグニチュード7.8の地震による死者は、トルコとシリアで4万4000人以上。シリアでは3600人が死亡した。活動家が言うところの、悲劇の真っただ中で世界に見捨てられた人々に、さらなる不幸が重なった。
シリア北部・北西部の政府が支配していない地域では、400万人以上が暮らしている。彼らの9割が援助に頼って生活している。
しかし、国連の援助物資を乗せた最初の車列がその地域に入ったのは、地震発生から3日後の2月9日だった。地震前に届くはずだった5000人分のテントやその他の援助物資が運ばれた。
国連は主に、隣国トルコを経由し、バブアルハワ国境検問所を通ってシリア北西部に援助物資を届けている。シリア政府の許可を取らずに援助物資を運ぶことができる唯一の経路だ。
国連が承認した国境検問所の数は、2014年には4つだったが、シリア政府を支持する、国連安保理常任理事国である中国とロシアから長年にわたって圧力を受け、減少した。
地震の後、バブアルハワに通じる道路が一時的に損傷し、被災地にいる援助関係者も影響を受けたため、大量の援助物資の搬入を求める国際社会の圧力が高まった。
シリア政府は、国連がバブアルサラム国境検問所とアッライ国境検問所を3カ月間使うことを許可した。国連が2月13日、発表した。
トルコが支援する反政府勢力が北部アレッポ県にある2つの国境検問所を運営し、イスラム過激派組織タハリール・アルシャーム機構(HTS)がイドリブ地域にあるバブアルハワ国境検問所を管理している。
国境検問所が追加されたにもかかわらず、国連による援助物資の輸送はいまだに不十分だと援助関係者は言っている。
地震発生後、国連はシリア北西部に約200台のトラックを送ったと発表したが、国境なき医師団(MSF)は、2022年に記録した週平均145台より少ないと言っている。
反政府勢力支配地域で活動するシリアの救助団体「ホワイト・ヘルメット」は、国連の対応の遅れを「犯罪」と呼んで非難している。
2月12日、国連のマーティン・グリフィス緊急援助調整官は、国連が「シリア北西部の人々を失望させた」ことを認めた。
ステファン・ドゥジャリク国連事務総長報道官は20日、援助物資を乗せたトラック10台がアッライ国境検問所を通過したと発表した。
「シリア政府がそこを援助物資の輸送に使うことに合意してから初めて、国連の車列がこの国境検問所を通過しました。これで、国連が使うことができる、完全に稼働している国境検問所は3カ所となりました」
国際援助団体は、国連の越境支援メカニズムに縛られておらず、トルコの承認を得た上で他の検問所を通って援助物資をトラックで運ぶことができる。
国際機関はまた、「地元の市場から、もしくは商用検問所を通じてトルコから必要なものを購入」するために北西部の援助団体に資金を提供していると、「アクション・エイド」のラチャ・ナスレディーン氏は述べた。
しかし、今回の地震で数百万人が住む家を失い、毛布や食料、テントの備蓄はすぐに底をついた。
多くの寄付が寄せられたが、シリアでは生活必需品の価格が急上昇しているため、地元の団体は必需品を確保するのに苦労しており、トルコに通じる道路は地震で損傷している、と同氏は述べた。
地震の後、シリア政府支配地域には外国から援助物資が大量に空輸されたが、シリア北西部はほとんど自力でやっていくことになった。
シリアのバッシャール・アサド大統領の政府はトルコとつながる国境検問所を管理していないが、国連は使用許可を求めた。
シリアと同盟国であるロシアは長年、全ての援助物資が政府支配地域を通過することを求めている。ロシアは過去の安保理会合で、国連の越境支援メカニズムに拒否権を発動すると脅している。
援助団体の多くは、シリア当局が反政府勢力支配地域に援助物資を送ると信じていないと言っている。
2月10日、アサド政権は、人道支援物資を政府支配地域から反政府勢力地域に直接届けることを承認したと発表した。
しかし、イスラム過激派組織HTSのアブムハンマド・ジャウラニ指導者は、そのルートでは援助物資を通過させないと述べた。
HTSが支配するイドリブ地域では、約300万人(ほとんどがシリア内戦で避難した人々)が暮らしている。トルコの代理組織が支配するアレッポ北部の地域では、110万人が暮らしている
トルコ軍と、トルコが支援する約30の組織が、近隣のトルコの複数の県に属する地方評議会が管理する国境地帯を支配している。
北東部を支配するライバルのクルド当局は、アレッポ北部に燃料輸送トラック30台を送ったが、通行許可を得られず、引き返すことになった。
AFP