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旅券を持たず戦闘から逃れた数千人のスーダン人がエジプトとの国境で足止め

スーダン移民当局者によると、渡航書類を持たない12万人以上のスーダン人がワジ・ハルファ(上)とその周辺地域で足止めされている。(AFP)
スーダン移民当局者によると、渡航書類を持たない12万人以上のスーダン人がワジ・ハルファ(上)とその周辺地域で足止めされている。(AFP)
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16 Jun 2023 10:06:00 GMT9
16 Jun 2023 10:06:00 GMT9
  • 4月15日に戦闘が始まって以来、避難した人の総数は約220万人に増加
  • 渡航書類を持たない12万人以上のスーダン人がワジ・ハルファとその周辺地域で足止めされている

アスワン(エジプト):4月中旬にスーダンで戦闘が勃発したとき、人口600万人の首都ハルツームでは爆発音や銃撃戦の音、戦闘機の轟音が響き渡った。そのハルツームで、アブデル・ラフマン・サイード氏の一家は自宅に隠れて耐え抜こうとした。

サイード氏の自宅は、ハルツーム中心部にあるスーダン軍司令部の近くの最も熾烈な前線のすぐそばにあった。そこではスーダン軍と敵対する準軍事組織である即応支援部隊(RSF)が主導権を巡って戦闘を繰り広げていた。紛争開始から3日目、2階建てのサイード氏の自宅に砲弾が直撃し、家のほとんどが瓦礫と化した。

幸いにも、サイード氏と妻、そして3人の子供たちは生き残り、戦争で荒廃した街からすぐに脱出した。しかし、彼らのパスポートは自宅の瓦礫の下に埋もれてしまっていた。

サイード氏の一家は現在、渡航書類を持たずにスーダンの北の隣国エジプトとの国境で足止めされ、エジプトに渡ることができないでいる。同様に足止めされている人が他にも数万人いる。

国境に最も近いスーダンの都市ワジ・ハルファで電話インタビューに応じた38歳のサイード氏は、「私たちは命からがら逃げ出しました」と語った。そして、エジプト当局が彼ら一家を入国させないことにショックを受けたという。

「難民として受け入れてもらえるだろうと思っていました」とサイード氏は語った。

2か月が経過した現在も、ハルツームやスーダン各地で対立する2つの勢力の間で戦闘が続いており、数百人が死亡し、紛争解決に向けた協議が決裂した後、戦闘は止む気配がない。大勢の人々が自宅を離れて避難する状況が続いている。国連の統計によると、4月15日に戦闘が始まって以来、避難した人の総数は、わずか1週間前の190万人から、今週は約220万人に増加した。国連によると、避難民全体のうち50万人以上が近隣諸国に渡り、残りはスーダンの比較的平和な地域に避難しているという。


スーダンの移民当局者がメディアに説明する権限がないため匿名を条件に語ったところによると、渡航書類を持たない12万人以上のスーダン人がワジ・ハルファとその周辺地域で足止めされているという。その中には、これまでパスポートを取得したことがない人や、パスポートの有効期限が切れていたり、あわてて逃げ出す途中でパスポートを紛失したりした人もいる。

通常は人口数万人のワジ・ハルファにも、パスポートは持っているものの、国境を越えるにはワジ・ハルファにあるエジプト領事館でビザを申請しなければならないスーダン人の男女、子どもが殺到している。ビザの取得には数日、あるいはそれ以上かかることもあり、多くの家族が宿泊施設や食事を奪い合うことになり、路上で寝泊まりする人も少なくない。

エジプトに対して入国要件を免除するよう求める声が高まっている。米国に本拠を置くNGOのスーダン人米国人医師会(SAPA-USA)はエジプト政府に対し、スーダン紛争から逃れてきた人々が国境で亡命申請をできるようにするよう求めた。

ところが、エジプト政府は先週、入国要件を厳格化した。それまでは、エジプト入国にビザが必要なのは16~45歳のスーダン人男性のみだった。しかし6月10日、新しい規則により、すべてのスーダン人に電子ビザ取得が義務づけられた。エジプト外務省のアーメド・アブ・ザイド報道官は、この措置は国境のスーダン側のグループによるビザ偽造と戦うことを目的としていると明らかにした。

サイード氏は、6月10日の決定は国境で足止めされているすべての人々に対する「裏切り行為」だと語った。サイード氏は、AP通信の取材に応じたパスポートを持たずにハルツームを脱出した14人のスーダン人のうちの1人だ。14人全員が、エジプトが戦闘を逃れたスーダン人の入国要件を緩和すると考えていたと語った。

「私たちは自宅を離れることを余儀なくされています」とサイード氏は語った。「戦争なのです」

戦闘が勃発する前にビザを申請していたために、パスポートが外国大使館に留まったままの人もいる。ハルツームにあるほぼすべての大使館の職員は退避しているが、退避手続きでは、パスポートが悪者の手に渡らないようにパスポートを破棄することが求められることが多い。米国務省は声明で、現地に残されたパスポートを「無防備に放置するよりは」破棄することを選んだと明らかにした。

米国務省は、「渡航書類の欠如がスーダン出国を目指す人々にとって負担となっていることを私たちは認識しています」とし、「これまでも、そしてこれからも、解決策を見出すために、パートナー諸国との外交努力を続けていきます」

サイード氏の一家はハルツームから2日かけてワジ・ハルファに到着した。サイード氏は他の50以上の家族とともに学校に避難し、全員が慈善団体や地元コミュニティからの人道支援に頼って生き延びていると語った。

サイード氏はこの5週間毎日、他の多くの人と同じように渡航書類やビザの取得を期待して、ワジ・ハルファにあるスーダン入国管理局やエジプト領事館を訪れている。

しかし、エジプトが国境を開かない限り、サイード氏にチャンスはほとんどない。スーダンのパスポートは通常、ハルツームの入国管理局で発行されるが、戦闘が勃発して以来、その機能は停止している。ワジ・ハルファにある入国管理局の支局はコンピューター記録にアクセスできないため、期限切れのパスポートを手動で更新することしかできず、新しいパスポートを発行したり、紛失したパスポートを交換したりすることはできない、と前出の移民当局者は説明した。

スーダンとイギリスの国籍を持つアル・サマウル・フセイン・マンスール氏は、ハルツームでの戦闘から逃げ出す大混乱の最中、渡航書類を自宅に置き忘れたと、弟のイブン・シーナ・マンスール氏は説明した。

小児科医から政治家に転身した63歳のアル・サマウル氏は、他の英国民とともに避難するためにハルツームの英国大使館に入ることができなかった。イブン・シーナ氏は、武力衝突は「数日以内に」終わるだろうと考えていたと語った。

彼はまず西部ダルフール地方に行き、親戚の家に約1週間滞在した。しかし戦闘が続く中、彼はエジプト国境に向かった。ワジ・ハルファでは泊まるところが見つからず、近くのシャンディという町へ行った。

兄と同様に英国籍を持つイブン・シーナ氏は、市街戦が続いており、目標をそれた爆弾や銃弾が住宅に直撃しているため、書類を取り戻すためにハルツームに戻るのは危険すぎたと語った。

イブン・シーナ氏はスーダン国境に最も近いエジプトの都市アスワンで行った最近のインタビューで、「ハルツームへの帰還はサマウルにとって死を意味します」と語った。航空技師を引退したイブン・シーナ氏は、兄の近くにいるためにロンドンからアスワンにやって来た。

パスポートを紛失したか、持っていなかったため、足止めされている人々の中に、ハルツームの隣町オムドゥルマン出身の3人兄弟がいる。26歳、21歳、18歳の3人兄弟は、5月上旬にエジプトに入国できた両親と5人の姉妹と離れ離れになってしまった。

「この戦争で、私たちのような多くの家族が避難し、引き離されました」と、3人兄弟の父親であるサラー・アルディン・アル・ヌール氏は語った。「私たちは、彼らの権力闘争とは何の関係もありません。彼らはスーダンとスーダン国民を破壊しました」

AP

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