Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

スーダンの武力衝突と避難民の大移動 高まる南スーダンの苦難

Short Url:
22 Jun 2023 09:06:10 GMT9
22 Jun 2023 09:06:10 GMT9
  • 長引く戦闘により、ただでさえ逼迫している人道的資源への圧力が高まっていると南スーダンの国連常駐代表のアクエイ・ボナ・マルワル氏がアラブニュースに話した
  • 同氏は、アフリカ連合(AU)の権威が傷つけられており、アフリカがアフリカにおける諸々の危機に対し主体的に解決策を講じることが軽んじられていると主張する

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:スーダンで発生した武力衝突と大量に流出する避難民は、南スーダンの限られた人道的資源と脆弱な平和に脅威を与えている、と同国の国連常任代表アクエイ・ボナ・マルワル氏がアラブニュースに話した。

北の隣国から独立して12年、南スーダンは今もなお国内固有の問題に直面し続けている。同国では、百万人規模の避難民が貧困と政情不安から逃れるため、スーダンを含む近隣諸国に流出している。

スーダンのアクエイ・ボナ・マルワル国連常任代表。(AN写真)

スーダン国内の暴力的な権力闘争により、スーダンに在住していた何十万人の南スーダン人が、スーダン人やその他の国籍の人々とともに集団帰還を余儀なくされ、南スーダンのただでさえ逼迫している人道的資源を圧迫している。

「この人道危機には2つの側面があります」とマルワル氏はニューヨーク市での特別インタビューでアラブニュースに話した。

「第一に、スーダン、特にハルツームにいる200万人近い南スーダン国民がいます。彼らは今、南スーダンに戻ろうとしています。これは人々にとって不意打ちでした。

スーダン国内の暴力的な権力闘争により、現地人、外国人を問わず人々が同国を逃れ、隣国・南スーダンのただでさえ逼迫している人道的資源を圧迫している。(AFP通信)

「我が国の当局には、彼らに速やかに宿を提供し、そして、彼らの故郷である村に送還するための施設がありません。そのため、今あるわずかな施設も疲弊しています。

また、他の避難民にも門戸を開いたため、南スーダンにはスーダン人や他のアフリカ人、他の国籍の人々も避難しています。そのため、政府にも負担がかかっています」

スーダンでの武力衝突は4月15日に始まり、スーダンの事実上の指導者アブドゥルファターハ・アル・ブルハン氏が率いるスーダン軍と、アル・ブルハン氏の元副官で今は敵対関係にあるモハメド・ハムダン・ダガロ氏(ヘメッティの名でも知られる)が率いる準軍事組織RSFとの間で行われている。

この衝突によりスーダンは人道的危機に陥り、スーダンの保健大臣によると、最大3,000人が死亡し、国連によると180万人以上がスーダン国内または国境を越えて避難している 。その多くがエジプト、チャド、南スーダンに逃れているが、これらの国もそれぞれ個別の問題を抱えている。

南スーダンの貧困は、地域間の暴力、犯罪、公衆衛生上の問題、気候・経済面でのショック、統治体制の不備などのあおりを受け、国内の至るところで見られる。そして今、それは紛争と治安の悪化によって深刻化している。

南スーダンでは人口の約70%が貧困ライン以下で暮らしている。世界の人間開発指数では、南スーダンは最下位である。その上、ここ数年で最悪の洪水に見舞われ、非常に高いレベルの食糧不安に直面している。

2023年6月20日、南スーダンのジュバ近郊にあるゴロム難民キャンプで、蛇口から水を汲むスーダン人避難民。(ロイター)

2023年には、人口の76%にあたる約1,000万人の南スーダン人が、生きていくために人道支援を必要とする見通しだ。そしてその数は増加の一途をたどっている。

南スーダンの脆弱な安定も危機に瀕している。同国では2018年に和平協定が最後に締結され、不安定な停戦と2020年の暫定国民統合政府樹立につながった。

政府と主要な反対派との間の敵対関係は緩和されたものの、実は権力分担協定の論理そのものが、かえって暴力の長期化に寄与している。

和平プロセス監視メカニズムへの支援を昨年に停止した米国は、南スーダンの指導者には「重要な改革を実施するために必要な政治的意志の欠如」が見られ、合意の履行を怠っていると非難している。

国連安全保障理事会は最近、南スーダンが和平プロセスで規定された安全保障と武装解除に関するベンチマークを満たしていないとして、武器禁輸の延長を決議した。

マルワル氏は、この延長は「悪意による」ものであると同時に「非建設的」であり、「不誠実」な措置だとしている。

アクエイ・ボナ・マルワル(提供写真)

「米国人は南スーダンの指導者に怒っています」とマルワル氏。「彼らは私が好まない次の言葉を繰り返します。『我々はあなた方を取り上げてあげた』。つまり、我が国の独立を助けてやったという意味です。それは事実です。

「我々はそれを否定するわけではありません。独立を手助けしてくれたからといって、米国に我が国の独立と主権を従属させたら、我が国は主権国家たり得ません。

安全保障に関して意見が違うからといって、我々がもはや米国の友人でもパートナーであってもならないということにはなりません。我々は今後もアメリカと共に行動したいのです」

マルワル氏は、スーダンで起きている事態が自国の政治プロセスを弱体化させていると考えている。

「スーダンは現在IGADの議長国であり、南スーダンの和平実施はIGADによって監視されています。これが事の運びを遅れさせているのです」と同氏は、ジブチに本部を置き8加盟国を擁するアフリカの貿易圏、政府間開発機構(IGAD)に言及した。

「我が国のみで進めていることもあります。ですが、健全な地域機構に我々の取り組みを真に検証してもらうことは、いかなる場合でも好ましいことです。国際社会では、和平プロセスの実施に関して、我が国を信用していないメンバーも一部に存在しますから」

より広範な地域への影響拡大を防ぐことは、スーダンの危機を速やかに解決することを意味する。マルワル氏の最大の懸念は、戦闘が長期化し、さらなる破壊と避難民発生を招くことだという。

「私はハルツームで育ち、そこで学校にも通いました。」と同氏は話す。「今起こっていることを見るのは悲しいです。ハルツームは安定しているはずだと思っていました。それどころか前進していました。ところが今はすっかり後退してしまいました。とても残念なことです。スーダンはこの地域の重要な国であり、一刻も早く安定させるべきです。

緊張があることは知っていました。兆候があったのです。ですが、私たちは移行が非常に円滑に進むことを期待していました。双方の将軍が連帯していたからです。彼らは盟友でした。ですから、紛争勃発前から数日以内に、事態がなぜここまでエスカレートしたのか我々には分かりません。誰にも分からないことなのです。

紛争には迅速に対処しなければなりません。(戦闘は)不要だからです。スーダンの人々、特にハルツーム市民、そしてハルツーム自体が戦場になってはいけないのです」

紛争当事者の間では幾度か停戦合意が結ばれている。サウジアラビアと米国の仲介で双方の将軍を交渉のテーブルにつかせた結果成立した、いわゆるジェッダ宣言もその中に含まれる。

しかし、これまでの停戦合意はことごとく反故にされてきた。

サウジアラビアと米国は先日の共同声明で、「当事者が24時間の停戦を守らない場合、ファシリテーターはジェッダでの交渉中断を検討せざるを得ないだろう」と警告した。

アフリカ連合(AU)は、複数の国際的な和平努力の重複が「事態を複雑化させる要因」となっている可能性を指摘しており、これらを統一すべきだとしている。マルワル氏もこの呼びかけに賛同している。

「和平交渉のためにいくつものフォーラムを置く必要はありません。米国とサウジアラビアが将軍らを交渉のテーブルにつかせたとき、国連やIGADを含め、誰もが彼らの出方をうかがっていました。

だからこそ、南スーダンのサルバ・キール大統領は、ジェッダでの交渉の結果を待つ間、陰から貢献しようと言ったのです。

ですから、国連は一歩踏み込んで、IGADに事態に対処する手段を与え、結果がどうなるかを試してみるべきかもしれません。この状況には、人目を引く顕著なアプローチではなく、目立たない隠微なアプローチが必要なのかもしれません」

2020年10月3日、ジュバで行われた南スーダン和平協定調印式で、南スーダンのサルバ・キール大統領(C)とスーダンのアブドゥルファッターハ・アル・ブルハン主権評議会議長、チャドのイドリス・デビ大統領。(AFP)

「IGADはこのアプローチに適任です。スーダンはIGADの加盟国ですから。それに、サルバ・キール大統領は将軍らを個人的に知っています。

大統領は調停チームのメンバーであるケニアを引き入れるでしょう。この地域では非常に重要な国です。ジブチはスーダンの良き友人であり、IGAD加盟国でもあります。つまり、この3か国はスーダンのことをよく知っているのです。

これらの国に主導権を与え、自分たちに何ができるかを自覚させることで、事態をより早く打開する道が開けるかもしれません。

2023年6月16日、スーダンで両軍が戦闘が繰り広げられる中、西ダルフール州の州都エル・ジェニーナの路上で、軍用装甲車の先に覆われた遺体が横たわっている光景。(AFP)

しかし、マルワル氏はアフリカ連合の権威は繰り返し傷つけられてきたと考えている。

「我々は、聞く耳を持たない安全保障理事会の特定のメンバーを相手にしてきました。彼らは、アフリカ連合がアフリカ諸国に関わる問題について下した決定を尊重しません。そして、私が『尊重』という言葉を使うのは、自分が何を言っているのかを理解しているときのみです。

AUを和平プロセスの一部としておきながら、一方で、アフリカ諸国の首脳が南スーダンへの制裁に反対し、南スーダンの問題やその他の問題に自ら対処する機会を求めると、『いや、我々には我々なりの見方がある』と言うのは容認できません。

我々には道義的権威があり、我々がこれを行使するのは、我々のやり方がこの問題を解決する唯一の方法だと考えているからです。AUは一部の問題に関して、他と同等に重要な組織として扱われているとは思いません。特に南スーダンに関しては」

特に人気
オススメ

return to top