Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • ダルフールのマサリート族、準軍事組織による暴力が激化する中で新たなジェノサイドを恐れる

ダルフールのマサリート族、準軍事組織による暴力が激化する中で新たなジェノサイドを恐れる

戦闘で負傷し西ダルフール州から逃れてきた人々を治療している国境なき医師団(MSF)チームのもとに集まるスーダン難民たち。2023年6月16日、チャドのアドレ病院。(写真:Mohammad Ghannam/MSF、ロイター経由)
戦闘で負傷し西ダルフール州から逃れてきた人々を治療している国境なき医師団(MSF)チームのもとに集まるスーダン難民たち。2023年6月16日、チャドのアドレ病院。(写真:Mohammad Ghannam/MSF、ロイター経由)
Short Url:
28 Jun 2023 08:06:22 GMT9
28 Jun 2023 08:06:22 GMT9
  • スーダンで戦闘が続く中、全国で2800人近くが死亡、約280万人が難民となっている
  • ダガロ将軍率いるRSFは、現在の戦闘において国軍から支援されている非アラブ系少数民族のマサリートを標的にしていると非難されている

ハルツーム:スーダンの戦闘は、苦難の続くダルフール地方に辛い記憶を蘇らせている。この地方では武装集団が特定の民族を狙って民間人を攻撃しており、新たな「ジェノサイド」の恐怖を呼び起こしているのだ。

この暴力から生き残り、西部地域から隣国チャドに逃れたイナームさんは、「彼らは近隣の家を全て焼き払い、目の前で私の兄弟を殺しました」と話す。

人権擁護者である彼女は、「遺体が散乱した」通りを通って避難するのは悲惨だったと語る。なお彼女は、AFPの取材に応じた他の人々と同様に、親族に報復が及ぶことを恐れて偽名を使用している。

このような証言は、ダルフールの血塗られた歴史が繰り返されるのではないかという恐怖を呼び起こしている。この地方では2003年に、不平等を訴える非アラブ系民族による反乱を鎮圧するために、オマル・アル・バシール大統領(当時)がアラブ系部族の民兵組織を解き放って焦土作戦を行わせたのだ。

国連によると少なくとも30万人の死者と250万人の難民を出したこの紛争をめぐっては、バシール氏とその他の者たちが国際社会からジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪に問われた。

バシール氏が命じた残忍な攻撃の先頭に立った悪名高い民兵組織「ジャンジャウィード」から後に生まれたのが、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」である。

そのような経緯があるため、4月中旬にRSFがスーダン国軍との戦闘に突入し、戦闘が首都ハルツームからダルフールにまで急速に拡大するのを、この地方の人々は恐怖の目で見ていた。

イナームさんによると、戦闘発生の9日後、RSFとその同盟勢力であるアラブ系民兵組織が西ダルフール州の州都で彼女の地元であるエル・ジュナイナに進軍してきた。

彼女は、住んでいた地区を彼らに焼き払われた後、「RSFやアラブ系部族の戦闘員を避けるため遠回りしながら」避難し、約30キロメートル(18マイル)離れたチャドとの国境を何とか越えることができた。

別の難民(名前はただモハメドとしておいてほしいと希望)も、恐ろしい検問所を通った時のことを詳しく話す。

彼はAFPに対し、全ての検問所で「アラブ系民兵組織の戦闘員らから名前と部族を尋ねられた」と語る。回答次第では「処刑された」人もいたという。

RSFとその同盟勢力は「特にマサリートを標的にしている」とモハメドさんは非難する。マサリートは非アラブ系少数民族で、彼が言うには「(現在の戦闘において)国軍から支援されている」という。

「エル・ジュナイナでは古い紛争が再び目覚めているのです」

スーダンでアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いる国軍と、同将軍の元副官モハメド・ハムダン・ダガロ司令官率いるRSFの間の戦闘が続く中、全国で2800人近くが死亡、約280万人が難民となっている。

最悪の戦闘の多くはダルフールで起こっている。米国はこの地方の惨状について、過去の「ジェノサイドを不吉にも思い出させるものだ」と述べた。

マサリート族はダルフールの主要な非アラブ系民族集団の一つだが、この地方にはラクダの牧畜で暮らすリゼイガト族(ダガロ氏の出身部族)などのアラブ系部族も住んでいる。

国連のスーダン担当特別代表であるフォルカー・ペルテス氏は6月中旬、次のように警鐘を鳴らした。「民族的アイデンティティに基づいて民間人を狙う大規模な攻撃のパターンが現れてきている。それを行っているのは(RSFの制服を着た)アラブ系の民兵や武装集団であるとされている」

「それらの報告は深く憂慮すべきものであり、裏付けられた場合は人道に対する罪にあたる可能性がある」

国連、ノルウェー、イギリスは27日、ダルフールにおける特定の民族を狙った暴力やその他の虐待行為について、RSFとその同盟民兵組織が「大半を行っている」と述べた。

停電や電話・インターネットの遮断により、4800万人のスーダン国民の約4分の1が住むフランスとほぼ同じ広さのこの地方からの報道が大きく妨げられている。

国連はまた、北ダルフール州のエル・ファーシルや南ダルフール州のニャラなどの「都市をRSFとその同盟民兵組織が包囲しているという報告がある」ことを明らかにした。

アムネスティ・インターナショナルは、ダルフールにおいて2003年以降行われてきた「戦争犯罪や人道に対する罪との恐るべき類似性」に警鐘を鳴らした。

米国務省はエル・ジュナイナだけで最大1100人が殺害されたとしているが、マサリート族の指導部によると実際の死者数はそれより遥かに多いという。

彼らは声明の中で、6月12日までに5000人以上が死亡し、8000人以上が負傷し、数十万人が難民となったと告発した。

さらに、人々は「人道に対する最悪の罪、殺人、民族浄化、略奪」に苦しんでいると訴え、「狙撃者があちこちの屋根の上にいる」ことや、警察が「RSFの隊列に加わっている」ことを報告した。

モハメドさんは、「男性は狙撃者に狙われるから女性しか水汲みに行けない」ということをどの家族もすぐに悟ったと語る。

一方、国軍の兵士らは「戦闘が始まって以来、基地から出ていない」という。ハルツームの大部分と同じ状況だ。

ある部族の指導者はAFPに対し、「RSFやアラブ人らは」通り道にあるもの全てを「殺し、略奪し、燃やしている」という。エル・ジュナイナでは「マサリートのスルタンの家」が「絶えず攻撃に」晒されているという。

西ダルフール州の弁護士会は、部族の指導者らや活動家らが自宅で殺害されていると訴えている。

6月中旬には、前出のスルタンの兄弟であるタレク・バフル・エル・ディン氏や、西ダルフール州のハミス・アブドラ・アバカル知事が殺害された。後者は殺害される数時間前にサウジアラビアのテレビで、RSFが「ジェノサイド」を行っていると批判していた。

RSFはアバカル知事殺害への関与を否定したうえで、国軍は「古い部族間紛争という背景のもとで」行動していると非難した。

RSFのアブデル・ラフマン・グンマ・バラク・アッラー将軍は、国軍は「1000人のアリンガ族および1500人のマサリート族」を含む少数民族集団を武装させているとしたうえで、彼らがエル・ジュナイナで警察を攻撃したと告発した。

援助団体は、この戦闘により長年の人道危機が深まっていると訴えている。ダルフールではこれらの団体の診療所が襲撃されたり食料倉庫が略奪されたりしているのだ。

国境なき医師団(MSF)はAFPに対し、「この紛争は直接的な暴力を通して人命を危険に晒しているだけでなく、医療へのアクセスを大きく妨げている」と訴える。

同じくダルフールからの難民である教師のイブラヒム・イッサさんはAFPに対し、エル・ジュナイナの「地獄から」何とか逃げることができたと語る。そこでの戦闘は、「人々が民族を理由に殺された2003~2004年の」暗い記憶を呼び覚ましたという。

モハメドさんは、国軍とRSFの間の紛争は「内戦とジェノサイドに変わった」と話す。

チャドで活動するMSFの医師らは、「エル・ジュナイナから逃げようとした時に」銃撃された難民らの傷を治療していると報告した。

また、性的暴力が行われていることも伝えた。ある15歳の少女は、18歳の姉と共にチャドに避難しようとしていた途中、「バスの中で武装した6人の男たち」に強姦されたという。

アリス・ンデリトゥ国連ジェノサイド防止担当特別顧問も、「強姦、殺人、民族浄化といった活動が再燃する」脅威に警鐘を鳴らした。

ダルフールで現在行われている暴力は、それを行った者たちはいつか裁かれるのだろうかという疑問を再び提起している。

人権派弁護士のエマ・ディナポリ氏はAFPに対し、「原則として、ダルフールでこれまでに記録されている犯罪の多くは、戦争犯罪とはならないにしても、少なくとも人道に対する罪にあたる可能性が高い」と指摘する。

しかし、それを立証できるかどうかは、活動家らが銃弾や放火から逃れながら集められる証拠いかんにかかってくる。

ディナポリ氏は次のように語る。「現地の活動家らはできる限り高水準の証拠を記録しなければならない。特に、侵害行為の目撃者の話を詳しく書き留め、指揮統制の証拠や犯人の情報を記録すべきだ」

国連安全保障理事会がダルフールの状況を国際刑事裁判所(ICC)に無期限で付託して以来、「理屈の上では」同裁判所が「現在行われている犯罪に対する裁判権」を持っているという。

しかし、スーダンの過去を振り返る限り大きな期待はできない。スーダン政府はICCの指名手配犯を一人も引き渡していないのだ。今回の戦闘が発生した後で脱獄した指名手配犯もいる。

バシール氏を含む4人の容疑者は今も逃亡中だ。別の1人はアフリカの別の国で自首し、現在ハーグで裁判を受けている。

AFP

特に人気
オススメ

return to top