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国連安保理、スーダンの「想像を絶する苦しみ」の訴えを聞く

スーダンのダルフール地方のジュナイナの紛争から逃れてきたスーダン人女性、カディジャ・イッサ・ハミスさん(90)。仮設の寝泊まり場所の外を歩いて周りを見回す。チャドのアドレ。(ロイター)
スーダンのダルフール地方のジュナイナの紛争から逃れてきたスーダン人女性、カディジャ・イッサ・ハミスさん(90)。仮設の寝泊まり場所の外を歩いて周りを見回す。チャドのアドレ。(ロイター)
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10 Aug 2023 07:08:08 GMT9
10 Aug 2023 07:08:08 GMT9
  • 国連当局者らは、紛争終結に向けた取り組みを調整し、人道支援従事者に支援のための完全なアクセスを与えるよう求めた
  • また、ダルフールの事態は国全体を飲み込んで民族間の緊張を招き、近隣諸国に波及する恐れがあると警告した

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:スーダン各地で国軍と民兵組織「即応支援部隊(RSF)」の間の衝突が続き、「双方とも勝利を収めても大きな戦果を上げてもいない」中、同国の人々は今も「想像を絶する苦しみ」に直面していると、国連当局者らが9日に訴えた。

マーサ・アマ・アキヤー・ポビー事務次長補は、スーダン情勢に関する安全保障理事会の会合で、同国で今も続く暴力により広範囲で民間人が避難を余儀なくされている状況について語った。また、主要地域における紛争の激化や、民間人が住む地区が両陣営によって「作戦地域」に指定されたことで絶望的な人道危機がさらに悪化していることに対して懸念を表明した。

ポビー事務次長補は、ハルツーム、ダルフール、北コルドファンでは民間人やインフラを標的とした無差別攻撃が続いていると指摘したうえで、民間人保護や人権・人道法侵害防止の呼びかけが無視されていると訴えた。

また、性的暴力の蔓延、子供の迫害、武装組織への強制徴用のリスクなどが依然として存在しているうえ、ダルフールとハルツームでは人権擁護者の拉致や殺害の脅威が高まっていると警告した。

さらに、ダルフール地方における紛争の影響は特に懸念されるとしたうえで、エル・ジュナイナやシルバなどの地域で民族間の一触即発の緊張と「激しい暴力」が再燃していることに言及した。

「紛争当事者はダルフール地方の人々に多大な苦しみを与えている。(同地方で)続く戦闘は、過去の紛争時の民族間の緊張という古傷を再び開いている」

「これは深く憂慮すべき事態であり、急速に国全体を飲み込んで長期的な民族紛争を招き、近隣諸国に波及する恐れがある」

ポビー事務次長補は、チャドが先日ダルフールの関係者による会議を招集したことを歓迎し、武装組織、部族指導者、市民団体、女性団体を含む幅広い参加の必要性を強調した。

また、アフリカ連合および政府間開発機構による紛争解決に向けた取り組みを歓迎するとともに、米国、サウジアラビア、スーダンの近隣諸国による仲介努力を称賛した。さらに、効果的な仲介のためには地域・国際機関の間での連携が「極めて」重要だと強調した。

マーティン・グリフィス事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官の代理でスピーチした、国連人道問題調整事務所(OCHA)の運営・擁護部門の責任者であるエデム・ウォソルヌ氏も、数百万人の難民、性的暴力の蔓延、医療へのアクセス不足、深刻な食料不安など、スーダンで起こっている人道的大惨事について悲観的展望を述べた。

また、「人道対応計画」の26億ドルを全額調達することが緊急に必要だと強調した。支援を必要とする人々に不可欠な支援物資を届けるためのこの計画には、現時点で目標額の25%しか集まっていない。

ウォソルヌ氏は、世界のメディアにおいてスーダンに関する報道が少ないことを嘆きつつ、次のように述べた。「この紛争が始まってから4ヶ月近くが経つが、酷くなり続ける人道的災難の中に依然として数百万人が囚われている」

「現在、400万人以上が故郷から避難している。そのうち320万人は国内避難民で、90万人近くは国境を越えてチャド、エジプト、南スーダンなどの国々に逃れている」

「私はポートスーダンに避難した人々から性的暴力の由々しき証言を聞いたが、それらは国内各地の紛争多発地点からうんざりするほど大量に報告されている事例の一部に過ぎない。全国の病院の80%が機能しておらず、人々が緊急医療支援を受けることがますます難しくなっている」

ウォソルヌ氏は続けた。「スーダンに住む子供のうち半数にあたる1400万人が人道支援を必要としている。また、人口の40%以上にあたる2000万人以上が高レベルの急性食料不安に直面している。紛争は生活を破壊し市場への物理的アクセスを妨げるとともに、物価の急激な上昇を助長している」

「銀行システムは大きく混乱している。公共機関や民間機関もだ。そのせいで公共サービスの深刻な混乱が起こっており、経済の中を循環するお金がどんどん少なくなっている。停電は広範囲に及んでおり、教育サービスは中断している。一国とその国民が崩壊寸前にまで追い込まれているという話だ」

ハルツームでは、支援を必要とする人々への人道アクセスが依然として困難で、わずかばかりの支援を提供するために利用できる現地のリソースが限られているうえ、物資を補充する人道車列が6月以降保証されていない状態なのだという。

ウォソルヌ氏は、援助機関は支援提供を熱望しているものの、そのためには紛争当事者が定期的なアクセスを促進することや官僚的な障害が除去されることが必要だとしたうえで、現在、制限がありながらも支援物資を届けることができるのは、多くの場合ジェッダプロセスに支えられた「入り組んだ交渉」の結果だと述べた。

また、人道支援従事者のためのアクセスを交渉し彼らの活動を保護するために紛争当事者との直接のコンタクトを緊急に再開するよう呼びかけるとともに、迅速かつ大規模な支援ができるかどうかは「必要な許可やビザ次第」だと述べた。さらにスーダン当局に対し、この手続きを緩和して承認を加速するよう求めた。

米国の国連常駐代表であるリンダ・トマス=グリーンフィールド大使は、アントニオ・グテーレス事務総長の特別代表であるフォルカー・ペルテス氏が9日のブリーフィングに参加すれば国連スーダンミッションを国から追い出すという脅しがスーダン政府からあったとされることに対して深い懸念を表明した。

ペルテス氏はスーダン政府からペルソナ・ノン・グラータと宣告されているが、国連は、国連職員がそのようなステータスに指定されることはできないとしている。

トマス=グリーンフィールド大使はダルフールの状況に言及する中で、「近年の歴史の中で最悪の章の一つが繰り返されており、この上なく恐ろしい事態だ」と述べた。

「安保理と全国際社会には、民間人保護に関する国際人道法下の義務の遵守を紛争当事者に対し要求する責任がある」

「我々には、支援を緊急に必要としている人々のところに人道支援が届くようにする責任がある。そして、スーダン国軍とRSFに即座に武器を置くよう求める責任がある」

トマス=グリーンフィールド大使は、紛争終結に向けた地域と世界の関係者による協調的な外交努力を呼びかけ、人道支援提供の取り組みに対する米国のコミットメントを強調するとともに、危機の中にあるスーダン国民を支援するよう国際社会に求めた。

「この危機の時において、安保理と全加盟国は平和の側、歴史の正しい側に立たなければならない」

「流血を終わらせるために全力を尽くそうではないか。スーダンの政治的未来はスーダン国民のものであり、銃を持って人々の苦しみを長引かせている男たちのものではない」

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