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イスラエルによるガザ戦争の根底には、相手を非人間的に扱う虐殺の言葉がある

予想通り、イスラエルの支持者たちはこのコーラスに加わり、極めて暴力的で相手を非人間的に扱う言葉を発している。(AFP)
予想通り、イスラエルの支持者たちはこのコーラスに加わり、極めて暴力的で相手を非人間的に扱う言葉を発している。(AFP)
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24 Oct 2023 08:10:29 GMT9
24 Oct 2023 08:10:29 GMT9

ツチ族は「ゴキブリだ。我々は奴らを殺す」。アラブ人は「瓶の中で薬漬けにされたゴキブリだ」

最初に引用したのは、ツチ族への憎悪を扇動したとして大きな批判を受けたルワンダのラジオ局、Radio Television Libre des Mille Collinesで頻繁に繰り返されていた言葉だ。次の引用は1983年、イスラエル軍の元参謀総長、ラファエル・エイタン将軍によるイスラエル議会委員会の公聴会での発言だ。

ルワンダの憎悪に満ちたラジオ局が運営されていたのは1年間だけだった(1993~1994年)が、その扇動行為によって起きたのは、ツチ族の大量虐殺という現代人類史上でも最悪レベルの悲惨で悲劇的な事件だった。この「ラジオ虐殺」と、パレスチナ人を非人間的に扱おうとするイスラエルと米国による大規模な西側のプロパガンダを比較してみると、ほぼ同じ言葉が使われていることが見えてくる。

多くの人が忘れているようだが、直近のイスラエルによるガザ侵攻より遥か以前、さらにはイスラエルが建国される1948年よりも前から、イスラエルのシオニストによる主張は常に人種差別的で、相手を非人間的に扱い、排除的で、場合によっては明白に虐殺を訴えるものであり続けてきた。

イスラエル史から時代を無作為に選んで政府関係者、機関、さらに知識人の政治論を検証してみれば、行き着く結論は同じものになるだろう。それは、イスラエルが常に扇動と憎悪のナラティブを形成し、パレスチナ人の虐殺を絶えず主張し続けてきたということである。

この虐殺への意思に、今や多くの人が気づき始めている。「パレスチナ人の虐殺のリスクがある」と国連の専門家グループは先週声明を発表した。だが、この「虐殺のリスク」は、最近の事件から発生したものではない。

実際、世界中どこであっても、実行的な政治または軍事行動はそれを促し、理屈を与え、正当化する体系的な文章や言葉がなければ、まず実行に移されることはない。イスラエルによるパレスチナ人に対する認識は、この主張の完璧な裏付けになっている。

イスラエル建国以前、シオニストはパレスチナ人の存在自体を否定していた。多くの者は未だに否定を続けている。そうなってくるとイスラエルの集団意識としては、そもそも存在しない人々を殺すのは倫理的に責められるべきものではないという結論に達するのが合理的だということになる。

今こそ、いかにしてイスラエルの虐殺的な言葉が現場での実際の虐殺に結びついているかということに目を向け始めるべきなのだろう

ラムジー・バロウド

パレスチナ人がイスラエルの政治論において考慮される場合でも、彼らは「血に飢えた獣」、「テロリスト」、「瓶の中で薬漬けにされたゴキブリ」として扱われる。これに対して単なる人種差別だとレッテルを貼るのはあまりにも都合が良すぎる。人種差別もあるが、この人種至上主義は単にイスラエル人が主人でパレスチナ人が奴隷だという社会政治秩序を維持するためだけに存在しているのではない。実態はそれよりも遥かに複雑である。

10月7日にパレスチナ人の戦闘員がガザ地区の境界を越えてイスラエルに侵入し数百人を殺害した後も、この向こう見ずな行動の背景に対してはイスラエルの政治家、アナリスト、主流派知識人の誰一人として関心がないようだった。10月7日以後のイスラエル人、それと同程度の数の米国人たちが発した言葉が、その後のイスラエルによる残忍な対応に必要な雰囲気を作り上げたのだ。

イスラエルによるガザ侵攻の最初の8日間で殺害されたパレスチナ人の数は、過去最長かつ最大の破壊をもたらした2014年のイスラエルによるガザ侵攻、通称「境界防衛作戦」の犠牲者数を上回ったと報じられている。ディフェンス・フォー・チルドレン・パレスチナによると、パレスチナの子どもたちは15分に1人が殺されており、パレスチナ防衛省によるとガザ地区の死傷者の70%以上が女性、子ども、高齢者だという。

イスラエルにとって、こうした事実は意味を持たない。穏健派と認識されることも多いイツハク・ヘルツォグ大統領の考えでは、「民間人が気づいていない、関わっていないというレトリックは、全くの嘘である」という。「彼らは立ち上がることができたはずだ、あの悪の政権と戦うことができたはずだ」という単純な理由から、彼らは正当な標的なのだとヘルツォグ大統領は言う。彼が言う悪の政権とはハマスのことである。そのため、ヘルツォグ大統領によれば「責任は国全体にある」ことになり、彼は報復を誓ったのである。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相のリクード党に所属する国会議員のアリエル・カルナー氏は、ガザ侵攻の背景にあるイスラエルの目的を説明している。「現在の目標はひとつ、ナクバです。1948年のナクバが霞むようなナクバです」とカルナー氏は述べている。

ヨアフ・ガラント防衛大臣も同じ心情を表明している。彼こそイスラエルの宣戦布告を行動計画へと変えた責任者である。「我々が戦っている相手は野蛮人たちであり、相手に合わせた行動を取ります」ガラント氏は10月9日にそう述べている。「相手に合わせた」行動とは、つまり「電気、食料、燃料を断ちます。すべてを遮断します」ということだ。当然ながら、数千人の民間人が犠牲になっている。

既にイスラエルの政治権力のトップの1人が10月7日の事件はパレスチナ人全員に集団的責任があると宣言しているということは、ガラント氏の評価ではパレスチナ人は全員が慈悲に値しない「野蛮人」であるということになる。

予想通り、米国やその他西側諸国のイスラエル支持者たちもこのコーラスに加わり、極めて暴力的かつ相手を非人間的に扱う言葉を用いている。それにより、イスラエルの一般市民の間で主流となっている今の政治的論調が形成されているのである。たとえば、米国の大統領候補の1人であるニッキー・ヘイリー氏はFOXニュースに対し、ハマスの攻撃はイスラエルだけでなく「米国への攻撃」でもあると述べている。そしてヘイリー氏は真っ直ぐにカメラを見据え、「ネタニヤフさん、奴らを仕留めて、仕留めて、仕留めて」と悪意を込めて宣言した。

米国のジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官はまったく同じ言葉を使ったわけではないが、両者共に10月7日の事件と9月11日のテロ攻撃を比較している。その言葉の裏にある意図を詳しく説明する必要はないだろう。

リンゼー・グラム上院議員は米国の保守派と宗教支持者を集めて「我々は宗教戦争の只中にいます。なすべきことをしてください。あの場所を跡形もなく消し去るのです」と述べている。

同じように邪悪な言葉が、数多く発せられ続けている。その結果は絶え間なく放映され続けている。イスラエルはガザ地区の民間人を「仕留め」、数千という家屋、モスク、病院、教会、学校を「跡形もなく消し去り」つつある。まさに、またしても痛ましいナクバを生み出しているのである。

ゴルダ・メイア氏のパレスチナ人は「存在しない」、メナヘム・ベギン氏のパレスチナ人は「2本脚で歩く獣だ」、イーライ・ベン・ダハン氏のパレスチナ人は「動物のようなものだ。彼らは人間ではない」をはじめ、人種差別的で相手を非人間的に扱う発言が繰り返されるシオニストの論調は変わらぬままだ。

今ではそれらすべてが一体となりつつある。言語と行動の完璧な同調だ。今こそ、いかにしてイスラエルの虐殺的な言葉が現場での実際の虐殺に結びついているかということに目を向け始めるべきなのだろう。残念ながらパレスチナの数千人の民間人にとっては、この気付きは遅きに失するものなのだが。

  • ラムジー・バロウド氏は中東に関する執筆を20年以上に渡って行っている。国際的に文章が配給されているコラムニスト、メディアコンサルタント、複数の著作の著者、PalestineChronicle.com.の創設者。 X: @RamzyBaroud
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