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子供たちはウクライナ人のままでいたいと望む

2023年3月2日ウクライナ西部ウジホロドにて、現在およそ150人のロマ人とウクライナ人が共同生活する難民シェルターで障壁を見渡す難民の少年。(AFP通信)
2023年3月2日ウクライナ西部ウジホロドにて、現在およそ150人のロマ人とウクライナ人が共同生活する難民シェルターで障壁を見渡す難民の少年。(AFP通信)
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22 Mar 2023 08:03:32 GMT9
22 Mar 2023 08:03:32 GMT9

ロシアの侵略が始まってからの1年で、私たちは数え切れないほどの惨く、残虐な事件を目撃してきた。それらは毎日配信されるニュースの一部となり、私たちの生活の一部になっている。このような状況にもかかわらず、ウクライナの人々は、長く困難な時期を勇敢に耐えてきた。しかし残念ながら、ロシアの無責任な行動の結果は、身体的にも心理的にも、子供たちに直接的な悪影響を及ぼしている。彼らは運命を壊され、両親を亡くし、兄弟姉妹も死んでしまった。私たちの心に、それが大きな傷跡と耐え難い痛みを残している。

ロシアが今、近代史上最大規模の子どもの誘拐作戦を実施していると述べても間違いではないだろう。

公式発表されているデータによると、ロシア軍は一時的に占領したウクライナの領土からロシアへ、約16,000人のウクライナの子どもたちを強制的に移住させた可能性がある。非公式データは、70万人以上の子どもたちが違法に移送されたことを示している。ロシアの武力侵略によって両親を亡くした子どもたちの中には、新しい家族の養育を受けたり、養子縁組していたりするケースさえある。ロシア当局は、子どもたちを引き離し、まったく異なる遠方の地域に住まわせるためにあらゆる手段を講じているのだ。子どもたちには、運命を受け入れて適応するという選択肢しか残されない。これは、ロシアが若いウクライナ人に対して主導する同化プロセスの一環である。それは、対象者の母語、国籍、アイデンティティ、そして最愛の祖国さえも忘れさせることを目的としている。

私たちの目前に今あるのは、ウクライナの未来を盗もうとするロシアの姿に他ならない。

アナトリー・ペトレンコ

ロシアによる違法な子どもの移送とそれに続く養子縁組という一連の動きは、1989年の国連子どもの権利条約に公然と違反している。その第8条によれば、「不法な干渉を受けることなく法律で認められた国籍、氏名および家族関係を含む、自らのアイデンティティを保持する子どもの権利を尊重する」ことが各国に要求されている。

さらに、子どもの強制移送は、1948年の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(国連ジェノサイド条約)に定められたジェノサイドの定義に該当する。よって、ロシアの犯罪をいっそう暴力的に捉えることができる。

私たちの目前に今あるのは、ウクライナの未来を盗もうとするロシアの姿に他ならない。彼らは、あらゆる繁栄と成功の基準で私たちの国を築いていくはずの、新たな世代のウクライナ人を育てる可能性を奪おうとしているのだ。ウクライナのアイデンティティや歴史、文化が存在するという考えを否定するために、クレムリンは不断の取り組みを続けている。子どもたちの強制移送、再教育、そして強制的な養子縁組は、その重要な要素である。

国際社会は、ロシアの違法行為の中でも、最も脆弱な社会集団を標的にするこの側面に最新の注意を向けなければならない。私たちは、ウクライナの子どもたちが必要とするあらゆる保護を提供しなければならない。可能な限り早く、子どもたちを帰国させる必要があるのだ。ロシアの犯罪は国際法によって起訴されなければならず、それに加担した者すべてが裁きを受けなければならない。

子どもたちに関して、私たちはどんな努力も惜しむことはできない。なぜなら、この事態を終わらせなければ、他の国で、他の子どもたちが脅かされることになるかもしれない。次世代のために、力を合わせて安全な未来を形作っていこうではないか。

  • アナトリー・ペトレンコ氏はウクライナの駐サウジアラビア大使。
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