• アルカルジ県の北西に位置するこの井戸運河は延長7キロ以上に及ぶ

ムハンマド・アル・キナニ

ジェッダ：2千年の歴史をもつサウジアラビア中央部のフィルザン地下運河はサウジアラビアの第7のユネスコ世界遺産として登録されるか？

アルカルジ県の北西に位置するこの井戸運河は延長7キロ以上に及び、近隣の山からこの地区の農場に地下水を移動させるために使用された。

「『フィルザン』という名称が何に由来するのか、正確なことは誰にもわからない。きわめて古い名前だからだ」と、キングサウード大学地理学教授ファルハン・アル・ジャイディ博士がアラブニュースに語った。「ただし、水源のある近隣の山にも同じ名前が付けられている」

博士によると、灌漑システムは何千年も前から知られており、この運河も2000年前にまでさかのぼる。

「ほぼ7キロに及ぶ地区に延びるこの太古の運河と、フィルザン山の近くで発見されたイスラム教以前、さらにはキリスト教以前の時代にさかのぼる5千基以上の古代の異教徒の墓は、埋葬されたであろう都市住民の存在の証拠を与えてくれる」

この地区の歴史についての他の証拠はイスラム以前の時代のいくつかの詩にも見出すことができる。

アル・ジャイディ博士によると、この灌漑システムが地下に造られたのは、地上の運河で移動させると水が蒸発してしまうことに当時の人たちが明らかに気付いていたためだ。

「この灌漑システムは人類がこれまでに知るなかで最重要の伝統的灌漑工学システムの一つだ。このシステムでは、水平に走る地下水路を介して泉や井戸から取水して、水源から遠く離れた農場を灌漑していた」

これらの水路に沿う井戸のいくつかは、住人とその人たちが食料源として主に依存していた作物により多くの水を供給する上で役立っただろう、と博士は付け加えた。

アル・ジャイディ博士はこの地域に関する書籍も著しているが、深さ25メートルから20メートルの範囲の150もの穴が連なっているという。

「穴の深さは水源から運河口に向かうにつれて次第に浅くなり、（運河口では）ほぼ50センチだ。運河の井戸は5、6メートルおきにあり、口径は1メートルから4メートル。フィルザン運河と、アル・ウラーやアル・アシャの運河の違いは、フィルザン運河の方が竪穴が深く、運河そのものもサウジアラビア王国の他のどの水路よりも長いことだ。

アル・ジャイディ博士は、この運河の特徴について、遺産当局責任者のジャシル・アル・へルビッシュ博士と話し合ったという。

「アル・へルビッシュ博士は、当局は遺跡の開発と保存に関心を抱いていると表明した。実際に、私たちはこの遺跡がユネスコ世界遺産リストに登録されるという望みを抱いている」

アル・ジャイディ博士によると、キング・アブドルアジーズ研究アーカイブ基金（Darah）は、運河や近隣の頂上が平らなフィルザン山の墓地の遺跡の調査を行い、記録を作成するという重要な作業を実施した。

そのDarahの記録には、遺跡の地理座標、規模、地籍測量結果が記されている。運河の写真も撮影された。

「フィルザン運河の最後の修復プロジェクトはアブドルアジーズ国王の時代に行われたもので、1950年代まで続いた。だが、一部の井戸は現在、ごみと廃棄物で埋まっている。だから、直ちに遺跡の修復に取り掛かって、ユネスコへの登録に取り組むことを私は提案する」

アル・ジャイディ博士は著書のなかで、このエリアが地域を訪れた多くの欧米の旅行者や研究者をいかに魅了したかについて述べている。グレン・ブラウン、ジョン・フィルビー、ジェラルド・デ・ゴリー、ダニエル・ファン・デル・メーレンといった面々だ。

ブラウンは米国と海外での地質学の経験を買われて、故アブドルアジーズ国王が米国地質調査所に要請した支援に応じる形で、1944年にアラビア砂漠の水供給調査の一員として選ばれた。

米国の地質学者ジョン・レイネムント博士の記録によると、ブラウンは1945年初めにサウジアラビアに到着して、アラビア半島中央部の農業開発の可能性調査ミッションに参加した。

「ミッションの一環として、グレンはアルカルジ地区の地層を詳細に調査した。ブラウンは地下の帯水層にかなりの地下水資源があることを突き止めた。ブラウンのその調査結果報告書はサウジアラビア当局者にたいへんな熱狂をもって受け入れられた。報告書はグレンの博士論文としてノースウェスタン大学に提出された」とレイネムント博士は述べている。