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ティム・レンダーキング米特使インタビュー:イエメン停戦延長には「非常に強いコンセンサス」

イエメン内戦の平和的解決やタンカー「SFOセイファー」について協議するために土曜日にリヤドに到着したレンダーキング米特使。(AN写真、Huda Bashatah)
イエメン内戦の平和的解決やタンカー「SFOセイファー」について協議するために土曜日にリヤドに到着したレンダーキング米特使。(AN写真、Huda Bashatah)
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12 Sep 2022 10:09:47 GMT9
12 Sep 2022 10:09:47 GMT9
  • レンダーキング米イエメン担当特使は、フーシ派は軍事的解決を選択すれば完全に孤立することになると述べた
  • 同特使は、フーシ派の背後にいるイランが停戦延長を支援することで言行一致させることに期待を表明した 

アイシャ・ファリード

リヤド:イエメンの停戦延長の支持には国内でも国際的にも非常に強いコンセンサスがあり、内戦への逆戻りではなく平和的解決を地域の全ての国が支持していると、ティモシー・レンダーキング米イエメン担当特使はアラブニュースに語った。

同特使は土曜日、イエメンの国連仲介停戦を延長し永久的な停戦合意を実現するための外交努力の一環としてリヤドに到着した際にアラブニュースのインタビューに応え、フーシ派は軍事的解決を選択すれば完全に孤立することになると語った。

また、紅海上の老朽化した石油タンカー「セイファー」がもたらす脅威に対する認識を高め、その環境への「時限爆弾」に対処するために必要な資金を調達するための国連の取り組みへの支持も引き続き呼びかけていきたいと述べた。

7年以上にわたる内戦と人道危機の末、イエメン北部の大半を支配するフーシ派と国連が承認する政府の間で結ばれた停戦は、2ヶ月から6ヶ月に延長され、概ね保持されている。

イランが支援するフーシ派にとって、この停戦延長は誠意と善意を示し、イエメン国民の平和への願いに応える機会だとレンダーキング特使は考えている。

「国内や世界のイエメン人と話す中で分かったことは、誰も内戦への逆戻りを望んでいないということだ。そうなることを望むなんてありえない」

アラブニュースのアイシャ・ファリードによるインタビューを受けるレンダーキング米特使。リヤド。(AN写真、Huda Bashatah)

上級外交官のキャリアメンバーであり、2021年2月4日にジョー・バイデン米大統領によって特使のポストに抜擢されたレンダーキング特使は、石油派生物を乗せた船のホデイダ港入港を促進するという柔軟な対応によってイエメン政府が示したリーダーシップを米国は認めていると語った。

また、フーシ派による「標準的な運用手続きの変更」に起因した燃料危機を遺憾であるとして、「それによって問題が発生し、サヌアに停戦前のような長い天然ガスラインが即座に作られた」と述べた。

続けて、石油の輸送を妨げるような官僚的手続きを米国は支持しないと明言し、妨げなしに自由に石油をイエメンに輸入できる状態を確保することは米国にとって基本的かつ長期的な立場であると述べた。

さらに、(今年4月2日に発効した)停戦の不可欠な部分であるホデイダ港への石油タンカー入港を促進するうえでのイエメン政府の役割を認め、石油の輸入はイエメン国民に即座にプラスの影響をもたらすと述べた。

「石油の輸入により、燃料ラインが減り、食品工場にエネルギーが供給され、病院や学校や輸送ネットワーク全体に燃料が確保される。停戦はこれまで非常にうまくいっていると思っているが、これがその成功の基礎の一つだ」

レンダーキング特使は、2016年以降初のサヌア空港からの商用航空便を2万1000人が利用しており今後目的地が増える予定だと述べ、停戦の成功を示す例だとした。

また、停戦の結果として、イエメンにおける民間人犠牲者が60%減少したという。このことも、イエメン国民が実感できる恩恵という意味で停戦合意がもたらしたものを示していると同特使は見ている。

フーシ派は、8月2日の停戦延長の際に停戦内容の遵守を公言している。レンダーキング特使によると、10月に停戦を拡大した形で前進させることをフーシ派が引き続き支持すると米国は期待しているという。

「これら全て(燃料船や商用航空便などの停戦内容の柱)が10月以降に拡大することで、イエメン国民にさらなる恩恵をもたらし、非常に好ましい形で彼らの生活を大きく変えるだろうと我々は見ている」

レンダーキング特使によると、国連安全保障理事会の常任理事国の間には、イエメンの差し迫った問題は交渉を通して政治的文脈で解決しなければならないという国際的コンセンサスが存在する。特に、イエメン内戦に関して同じ見方をしている中国、米国、ロシアはそう考えているという。

イランが支援し武器を提供しているとされるフーシ派の戦闘員たちが、イエメンにおける破壊の大部分に関わっている。(AFPファイル)

同特使によると、イランまでもが停戦が更新される度に歓迎を表明している。また現在、特に10月にかけて、イエメンに対して国際社会から多大な関心が寄せられているという。

レンダーキング特使は、イエメン内戦におけるイランの役割を詳述する中で、同国はフーシ派に対して時に攻撃をけしかけることもあり、両者の関係はほとんどが「多大な損害をもたらすもの」であり続けていると述べた。

イラン製ドローン「アバビル」の残骸。UAE軍は、このドローンはイエメンのフーシ派が連合軍との戦闘で使用したものだとしている。2018年6月19日撮影。(AFP)

「イランはフーシ派が軍事力やUAV運用能力を高めるのを支援しており、大きな悪影響をもたらしている」と同特使は言った。「内戦を抑えるどころか煽っているのだ」

レンダーキング特使はそれでもなお、停戦を歓迎しその延長を支持するというイランの発言に、現在の前向きな道筋を支援するという行動が伴うことを期待していると述べた。

同特使は、イエメンとその指導部に対し、停戦と永続的な戦闘停止と政治的交渉を通した和平の可能性を遅滞なく受け入れるよう求めた。

サウジアラビアのクライス油田の衛星画像。フーシ派が2019年9月15日に行ったドローン攻撃による石油・天然ガスインフラの被害が示されている。(米国政府写真/AFPファイル)

「ここには多くの危機がある」と同特使は言う。「イエメン内戦に関しては、イエメン国内の生活や人道的に酷い状況だけでなく、サウジアラビアや湾岸諸国に対する攻撃によってそこにいる米国人の命が危険に晒されるという事実もある」

「フーシ派はこれらの国の石油などのインフラを攻撃しているのだ」

同特使は、あらゆる事を考慮すると、今こそイエメンとその指導部が停戦と永続的な戦闘停止と政治的交渉を通した和平の可能性を受け入れる時だと述べた。

内戦以外でイエメンに関連したもう一つの問題として国際的な懸念が高まっているのが、放置されたタンカー「FSOセイファー」だ。ここ数ヶ月で、国連が米国とオランダの協力のもと、セイファーに積載された原油を安全に移し替えるために7000万ドルを調達した。

ホデイダの北のラスイッサ港沖に放置され老朽化しているセイファーは、110万バレルの原油を積載しているとみられる。これは、1989年にエクソン・バルディーズ号の事故でアラスカ州プリンス・ウィリアム湾に流出した原油の4倍の量だ。

2015年に内戦が始まって以降、このタンカーは湿気と腐食にさらされた状態でほとんどメンテナンスされないまま放置されている。

このタンカーを救出する取り組みの先頭に立っているレンダーキング特使は、「迫りくる災害」は防げると楽観している。

中東地域の国だけでなく欧州や米国からも相当な支援が寄せられているという。米国はサウジアラビアなどと共にこの取り組みに対する最大の支援提供国の一つで、1000万ドルの支援を約束している。

「エクソン・バルディーズ号の4倍の量の原油流出が起これば、多くの国際通商が経由する紅海の沿岸に壊滅的な被害が出ることは明らかだ」と同特使は言う。「西海岸の港に石油タンカーが入港できなくなれば、イエメンの人道的状況がさらに悪化するだろう」

同特使は、民間部門もタンカー救出の取り組みに協力しているが、さらなる支援ができるはずだと言う。タンカーの問題が解決すれば、国際通商、海の多様性、貿易に恩恵があるだけでなく、イエメンの人道危機からの復興を助けることにもなるのだからと。

第一段階として、セイファーが積載する原油をより安全なタンカーへと移し替えることになる。しかし、この段階のための資金調達(8000万ドル)が完了しておらず、信頼できる政治的合意も得られていない。

レンダーキング特使はそれでも、タンカー救出に向けた取り組みは有意義だと信じていると言い、開始以降大幅な進展があったことを指摘し、この問題においてサウジアラビア、米国、オランダ、国連およびその他の支援提供者が示してきたリーダーシップに満足していると述べた。

「まだ目標には到達していない。重要なのはもちろん、タンカーの崩壊や原油流出が起こる前に原油を移し替える作業を実際に行うことだ。本当にそれを懸念している。いつ起こってもおかしくないからだ」と同特使は述べた。「専門家は何年も前からこのことに警告を発してきたのだ」

レンダーキング特使は、セイファーの原油をより安全なタンカーに移し替えることについては合意が成立していると指摘し、この目的が今年中に達成されることを「確信している」と述べた。

「これは現実的な目標だ。今月の国連総会ではこれまでの進展が示され、この取り組みに対する支援の継続の呼びかけが行われると思う」

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