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イエメン内戦

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09 May 2020 12:05:31 GMT9
09 May 2020 12:05:31 GMT9

サイード・アル=バタティ

  • イランの後ろ盾を受けたフーシ派のアデン進撃を受け、サウジ率いる多国籍軍が介入開始

概要:

2015 年 3 月 22 日、イエメン北部における軍事力拡大を受けて意気が上がるフーシ派の指導者アブドル・マリク・アル=フーシが、陥落した首都サナアからアデンへと撤退したアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領打倒のための軍事行動の開始を呼びかけるテレビ演説を行なった。

限られた軍部や部族勢力のみに守られるハーディーは、それでもフーシ派の進攻に対する抵抗を続けることを鮮明にし、近隣の湾岸諸国に軍事支援を要請した。

軍事支援はサウジ率いる多国籍軍による重点的爆撃という形で即座に実現し、戦況を一気に政府軍有利へと傾けることになる。結果政府軍は国土の 8 割を回復することに成功した。だが何万ものイエメン人犠牲者を出し、それ以上の人々を飢餓に苦しませることになるこの内戦は収束の糸口すら見出せないまま続いている。

アル=ムカッラー(イエメン): 2015 年 3 月 22 日、イランを後ろ盾とする武装組織フーシ派の指導者アブドル・マリク・アル=フーシがアルカイダおよびダーイシュ(イスラム国)の軍事組織を駆逐するための総括的軍事行動を呼びかけるテレビ演説を行なった。

その 2 日前、2014 年9 月以来フーシ派の支配下にあったイエメン首都サナアのモスクにおける 3 回の自爆攻撃によって 100 名以上が殺害されていた。この攻撃はダーイシュのイエメン支部が犯行声明を出していた。

だがここイエメンにおいてはフーシ派指導者の本当の狙いが、サナア陥落以来暫定首都となったアデンへと籠るイエメン大統領アブド・ラッボ・マンスール・ハーディーをついに打ち破ることにあることは、周知の事実であった。

フーシ派指導者が武装蜂起を呼びかける前日、ハーディーはフーシ派による反乱の中核である北西部の都市サーダにイエメンの国旗を掲げ、イエメンにおけるイランの野望に打ち勝つ、と主張する挑戦的な演説を行っていた。

この 2 つの演説を観た私は、この 2 人の指導者が率いる勢力による大きな武力衝突は避けられない、と感じた。フーシ派の指導者による演説は、彼の軍勢がイエメン第 3 の都市タイズを制圧し、ハーディーの支持基盤である南部へとさらに進撃するのと同時に発表されたものだった。

フーシ派がその兵員数・兵器量ともに自身の寄せ集めの軍を上回ることをハーディーは知っていた。そこで彼は外相にテレビ出演させ、近隣の湾岸諸国による軍事介入を訴えさせた。

「イエメンにおける軍事活動の主な目的はフーシ派の補給経路を遮断することにある、と防衛省幹部は金曜日に述べた」

モハメド・アル=スラーミ執筆による 2015 年 3 月 28 日付アラブ・ニュースの一面記事

 

3 月 22 日に国連安全保障理事会が「イエメンの統一・主権・独立性・領土を強固に保証」して「政権移行過程を蔑ろにし、国家の安全と安定を妨げるフーシ派による一方的軍事行為を非難」する声明を発表したことにより、ハーディーはすぐに勢いを取り戻した。

だがこの断固とした声明をもってしても、フーシ派はアデンに向けた進軍を止めなかった。イエメン人記者としてこの問題を当初から追い続けてきた私は、ハーディーを執拗に追い続けるフーシ派を鼓舞する一人の男の影響力について知っていた。アラブの春に伴う抗議活動とその余波による混乱が数ヶ月続いたのち、 2012 年 2 月に退任するまで 30 年以上に渡りイエメン大統領を務めたアリー・アブドッラー・サーレハこそがその人物である。

サーレハの後を継いだのが彼の副官を 18 年間務めたハーディーだった。しかしサーレハは大統領の地位を委譲した後も軍部に多大な影響力を維持し、フーシ派の急速な軍事力拡大に貢献した。

彼の影響力は2017 年に彼とフーシ派の同盟関係が崩れ、フーシ派によってサーレハが暗殺された後も維持された。サーレハが大統領を退任した際に彼はイエメンの国旗のみを委譲したのであり、軍部はその後継者であるハーディーのフーシ派と戦えという命令を無視した、とハーディーはのちに語っている。

フーシ派の指導者が演説を行った直後、彼の軍勢の一部はアデンへの進攻を開始した。イエメン北部への展開の速さから考えると、側から見ていた者たちにすればそれはこの街の制圧を目指しており、ハーディーを再び捕虜とするかもしれないことは明らかだった。

 

主要な日付

  • 1

    イランを後ろ盾とするフーシ派がイエメン首都サナアを制圧。

    Timeline Image 2014 年 9 月 21 日
  • 2

    フーシ派が国会を解散してアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領を自宅軟禁し、政権を掌握。

    Timeline Image 2015 年 2 月 6 日
  • 3

    ハーディーがアデンへと脱出し、フーシー派の掃討を宣言。

    Timeline Image 2015 年 2 月 21 日
  • 4

    フーシ派指導者アブドル・マリク・アル=フーシがハーディーに対して宣戦布告し、自軍に対してアデンへの進撃を命令。

    Timeline Image 2015 年 3 月 22 日
  • 5

    サウジ率いる多国籍軍がフーシ派の軍勢に対する爆撃を開始し、大統領派の反撃開始を援助。

    Timeline Image 2015 年 3 月 26 日

一方のハーディーは政権のモハメド・マハムード・アル=スーバイヒ防衛相の指揮のもとに現地の部族勢力や軍の残党勢力をかき集めていた。しかし軍に対するサーレハの影響力がいまだに残っていることは明らかであり、前大統領の指揮下にあったダーレ・ラハジ・アビヤン・シャブワ各地の部隊は進軍するフーシ派勢力の支援を行い、彼らが数日のうちにアデン郊外へと到達する手助けとなった。

フーシ派による軍事的進攻の影響は多大であった。内戦によってアルカイダとダーイシュは軍やその他の武装組織がフーシ派と共に戦うために留守にした南部へと拡大していった。

当時においてもここイエメンの専門家たちは、アルカイダとダーイシュが息を吹き返したのは、ハーディーに権威を失わせ、アデンや周辺地域に進攻する口実を作り出すためにサーレハとフーシ派が企てたことだ、と私に語っていた。

アラブニュースのアーカイブから、2015 年 3 月 28 日のニュースを伝える記事

国民対話会議の取り決めは内戦によって全く前進をみない。 2013 年 3 月 18 日に始まった会議においてフーシ派を含むイエメンの様々な対立勢力が全て集まり、国家が直面する多くの課題に対する解決策について同意したのだった。

2014 年 1 月 22 日に閉幕した会議において、国家が 6 つの自治区に分割される計画が承認された。しかし 2015 年 3 月 22 日の時点でフーシ派が国家全土を掌握する勢いを持つなかで、この計画が実施される可能性は無かったのである。

これ以外にもフーシ派による軍事活動の影響として、イエメンの政治的対話においては過去に見られなかった宗教的な対立が持ち込まれたことが挙げられる。この国における紛争は長い間、政党間や部族間の対立の結果であると見られていた。しかしシーア派の集団であるフーシ派がスンニ派が多く住む南部への侵攻を試みることは、宗教的対立という新たな大義名分の始まりを意味した。

国家の失望が頂点に達しようという時に、助けは天から降ってきた

サイード・アル=バタティ

アデンへと向かうフーシ派が部族勢力や軍の抵抗を次々に打ち破り、 3 月25 日に空港を制圧するまでの数日間、一般市民や軍司令部はその進軍を止めることはできないという絶望にかられていた。ハーディーは国外へと脱出し、軍幹部たちは兵力で優るフーシ派と正面からぶつかり合うのを避けてゲリラ戦術で戦うことを考えていることを私に明かした。

しかし、国家の失望が頂点に達しようという時に、助けは天から降ってきた。 2015 年 3 月25 日、 1 年以上に渡り私の情報源となっていた軍の将校が午前 3 時頃に喜びに満ちた声で電話を掛けてきた。良い知らせを伝えるために夜が開けるまで待てなかったのだ。「サイード、起きろ!サウジアラビアがアデンのフーシ派に対して爆撃を開始したぞ」と彼は伝えてきた。「これで我々も軍を立て直して反撃を始められる。」

もちろん物事はそれほど単純には進まなかった。サウジ率いる軍事介入にもかかわらず、 3 月 22 日に始まった内戦は今も続いており、何万ものイエメン人の命を奪い、世界最悪の人道的危機を引き起こし、すでに分裂していた国家をさらに引き裂いたのだった。

  • サイード・アル=バタティは南部港湾都市アル=ムカッラーを拠点に活動するアラブ・ニュースのイエメン担当イエメン人ジャーナリストである。 Twitter: @saeedalBatati
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