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新型コロナウイルスによるパンデミック

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02 May 2020 04:05:50 GMT9
02 May 2020 04:05:50 GMT9

ジョナサン・ゴナル

概要

2020年3月11日、中国が最初に悪性が強く、致死率の高い新型コロナウイルスを特定してから2ヵ月以上が経過し、そして114ヵ国で既に複数の感染例が報告されてから、ようやく世界保健機関(WHO)は世界がここ1世紀以上に直面してこなかった規模のパンデミックに見舞われていると宣言。

動物の集団には数百もの種類のコロナウイルスが存在すると考えられているが、これまでに人間に感染する能力を持ち、風邪から中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)のような、より深刻な呼吸器疾患に至るまでの病状を起こす原因となったウイルスは6種類だけである。

そうした中で、今回の新型コロナウイルスははるかに危険で、これまでのコロナウイルスのどれよりも封じ込めるのが困難だった。 新型コロナウイルスは僅か5ヵ月で世界中のほぼすべての国に伝染し、600万人以上を感染させ、375,000人以上の命を奪い、そして世界経済を壊滅させた。

2020年1月2日の新年のメッセージで、世界保健機関(WHO)の事務局長は、「勇気のある医療従事者全員に感謝するため、少し時間をとる」よう世界に呼びかけている。その後数週間経つと、この時のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス博士の言葉は、かつてないほどの緊急の意味合いを持つようになる。

1918〜19年のインフルエンザによるパンデミック以来遭遇することの無かった極めて悪性の強い微生物との生存をかけた闘いに、現代世界が巻き込まれようとしていることがすぐに明らかになった。

また、主として世界中の政府が1つにまとまり効率的に介入できないことで、どんなに最近の医学とテクノロジーが進歩していても、我々は依然として気まぐれな自然に翻弄される存在なままであることがすぐに明らかになった。

1月26日、私は地域全体に同時配信される意見記事上で、少なくとも中国からの入国者をスクリーニング検査するよう湾岸諸国に要請した。その段階での正しい対応は、世界が今知っていることからすれば、新型コロナウイルスに対し、「用意周到に過剰に対応」することであった。2月17日、私はメッセージを強化した。新型コロナウイルスに対し、相互接続している世界が持つ、最も効果的な防御策は、すべての航空機を地上待機にすることだ。

私は医学問題を専門とするジャーナリストであり、British Medical Journal誌やその他出版物のために調査記事を定期的に執筆しているが、特別な洞察力には恵まれていなかった。過去5ヵ月間に目の当たりした悲劇の中にあって、我々が取るべきだった、また取り得た対応策は、単に常識に従うことだった。

しかし、最初は、中国の中心地から外れた武漢市で、2019年の大晦日に、北京からWHOの中国事務所に報告された40人を超える謎の肺炎のような症例のクラスター発生に過度に不安を示す者はほとんどいなかった。

中国で不吉なことが起こっていることには何一つも触れることのなかったテドロス事務局長のスピーチの1週間後、北京が疾病の原因を特定したと発表した。新型のコロナウイルスで、新しく発見された動物と人間に共通するウイルスの一種であると。

新型コロナウイルスは動物界に由来するもので、コウモリからセンザンコウに感染した可能性がある。センザンコウは国際法および地元の法律でも保護されたうろこに覆われた動物で、中国の民間医学でそのうろこが珍重され、違法に取引されている。

新型コロナウイルスとセンザンコウとの結びつきが確立されるかどうかにかかわらず、2020年のパンデミックの記憶が、我々が自然との関係を無防備に乱すことで、集団的危機を招いていることの警告となることを願うばかりである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がかなり長い間に渡って我々と共に存在することは今や明白であり、我々が今後取るべき行動は、長期間の共存を前提としたものでなければならない。

2020年3月12日、アラブニュースの第1面に掲載された専門家の記事

いくつかの一般的で絶え間なく伝染を繰り返すヒトコロナウイルスは、普通の風邪などの軽度から中程度の上気道疾患を引き起こす。過去20年間では、コロナウイルス科に属するウイルスで、人に深刻な害悪をもたらす悪性を持つことを示唆する2つの新型ウイルスが浮かび上がっている。2003年に出現した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と2012年に最初に発見されている中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)である。

SARSとMERSの合計で、感染者はほぼ10,000人強、死者数は約1,630人だった。しかし、今回のコロナウイルス科の新参は、はるかに悪性で、感染率も高いウイルスであった。

2020年1月11日、中国で新型コロナウイルスによる最初の死者が報告されている。61歳の男性で、ウイルスが初めて動物から人間に感染したと考えられている市場の顧客だった。

それから数日、あるいは数週間にわたって、ウイルスを封じ込めることが出来た可能性があったが、中国は効果的な都市封鎖手順を導入するのに手間取った。航空機は飛び続け、他の世界の国々も、関心を寄せることなく傍観を続けた。そうした姿勢がその後すぐに数十万人の死者と世界経済の壊滅的状況を招くこととなった。

ウイルスが中国国内で急速に広まっていた時期も、WHOは脅威の抑制に努めていた。実際、2月4日、テドロス事務局長は「公衆衛生上の利益がほとんどなく、恐怖と偏見が高まる」のを恐れて、武漢からのフライトを禁止しないよう各国に要請までしている。

公衆衛生上の公式表明で、これほど思慮が足りないと後で判明したものは無い。

2月11日、WHOはウイルスの正式名称を決定した:重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。この疾病を引き起こしたのは新型コロナウィルス(COVID-19)であった。しかし、WHOが最終的に今回の感染状況をパンデミックであると宣言したのは3月11日になる。その時点で、既に新型コロナウイルスによる危機に瀕していた114ヵ国にとっては、状況は明々白々であった。

世界各国の政府はほとんど結束せずに反応し、すでに出遅れたWHOのアドバイスはしばしば手遅れになるまで受け入れられない有り様であった。一部の指導者、特に米国のドナルド・トランプ大統領は、一連の事実をゆがめた、危険でさえあるメッセージを発信し、自らの公衆衛生サービスの取り組みを妨げさえした。

さらに悪いことに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法や予防接種がない現状にあって、明らかに飲み込む必要のある苦い薬であるにもかかわらず、多くの政府は短期的、予防的な経済活動の縮小措置さえ受け入れることに消極的であった。

疫学的には、蚊がマラリアを広める媒介をするように、新型コロナウイルスでは、航空機が必然的に有効な媒介手段として機能した。結局、一貫性のない無計画な方法ではあったが、フライトは地上待機となりはした。しかし、取られた対策はウイルスが世界中に蔓延するのを防ぐには遅すぎ、最終的には、飛行機による移動がもっと早期に停止されていたら防ぐことができたであろう、はるかに大規模な世界的経済混乱を引き起こした。

そうした状況下でも、多くの国々は迅速に行動することなく、店舗、オフィス、レストラン、交通機関を閉鎖し、人々を家に閉じ込めることには消極的だった。一貫した指導がなされず、多くの人々が仕事、電車、レストラン、公園、ビーチで交わり続けた。

ウイルスが世界中に蔓延するにつれ、長期的な健康計画と準備の欠如が明らかになった。多くの国で、空きベッド数、最前線でウイルスと戦う医療スタッフが個々に身に着ける保護具、更に何よりも治療に重要な人工呼吸器が不足していることに気が付かされた。

行動が遅々として進まない国々は、高い代償を払うこととなった。世界で最も裕福で科学的に先進的な国の1つである米国が、最も多くの感染者と死者を出している。6月2日時点で、新型コロナウイルスは180万人の米国人に感染し、その内105,000人以上を死に追いやった。これは、世界で最も多い死者数であり、ベトナム、韓国、アフガニスタン、イラクでの、米国軍人の死者数とも並ぶ人的損失である。

世界中で、生死を分ける場面に直面した医療システムは、本来は戦場でより一般的に適用されるトリアージシステムの採用を余儀なくされ、生き残る可能性が最も高い人に、限られたリソースを割り当てざるを得なくなっている。

2020年3月12日のニュースを表示するアラブニュースアーカイブのページ

世界中のほぼすべての国で、喪失と犠牲の惨劇が当たり前のこととなった。新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線では、テドロス事務局長の新年のスピーチで称えられた勇敢な医療従事者の多くが、まさしく献身的に職務に従事することとなった。

4月の初め、中国の武漢で最初の犠牲者が特定されてからわずか3ヵ月で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確認された感染者数は100万人を超え、死者は5万人以上となっている。世界中の多くの国々の国民が、孤立し、見えないウイルスの恐怖の中で暮らしていた。

しかし、ウイルスの蔓延はまだ序章に過ぎなかった。 6月2日現在、わずか2ヵ月後、世界中で確認された感染者数は630万人となり、375,000人を超える死者が出ている。無症状感染者数の研究推定数を勘案すると、実際の感染者数は少なくとも5,600万人にのぼると見込まれている。

新型コロナウイルス感染症が今後どのような推移をたどることになるのか、未だ不明である。ワクチンや治療法の開発との競争となっているが、どちらも現状では時間がまだかかる見込みである。そして、2020年の最初の数ヵ月の問題が、ドアを閉めるのが遅すぎたということであれば、多くの関係する疫学者の見解では、現在の問題は、都市封鎖を終わらせようと急いで同じドアを開放することで、新型コロナウイルス感染症の第二波のリスクを犯すこととなる。

こうしたことは、世界中の日常生活上で起きている混乱であるが—ウイルス自体と同じくらい、世界の分裂した対応が招いている状況でもある—我々は新型コロナウイルスが教えてくれた厳しい教訓、世界的な脅威に直面して協調して行動する必要性について学ばなければならない。しかし、先週トランプ大統領が政治的な動機から、米国の世界保健機関(WHO)からの脱退、資金拠出停止を公表したことは、幸先の良い兆候とは言えない。

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)による損失は甚大なものであるが、疫学者はこのコロナウイルス以上に悪性が強いウイルスの存在を恐れている。我々が不可避の次のパンデミックに限らず、コロナウイルスの危機に直面してほぼ忘れかけているが、引き続き我々全員が直面している気候変動による、究極的にはるかに大きな現在進行形の脅威に、成功裏に立ち向かっていくには、我々は同じ人類としてよりよく協力することを学ぶ必要がある。

  • アラブニュースのライターであるジョナサン・ゴナル氏は、医学問題を専門とし、British Medical Journal誌の調査記事も執筆している。
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