2009年末までに、株式市場は崩壊し、世界中の経済は急激な不況に陥り、個人-破産や家を失ったりしていない人だが―は生活水準に大きな打撃を受け、多くの人が諦観の境地に至った。自殺者の急増が報告された。
中東では、2007年、原油価格―いつでも地域経済の決定要因である―は、世界的な好景気に牽引され、新千年紀が始まって以来ずっと上昇傾向にあった。
サウジアラビアはその収入の恩恵を受けて、石油から離れ経済を多角化しようと考えていた。その数年前に世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、同王国はより外に視点を向けるようになり、おそらくアラブ世界の好景気のロールモデルとなっていたドバイの輝かしい事例に目を向けていた。
それからの目まぐるしい2年間、原油価格は暴落し、2008年後半には1バレルあたり100ドルの価値を失い、政策立案者が生き残りを優先する中で多角化計画は保留となり、ドバイでは負債に依存したビジネスモデルが存亡の危機に瀕していた。
当時、あるコメンテーターは「9.11と同等の金融危機だ」と語っていた。

「昨日のニュースでは、アジアが最初に暴落し、中東、ロシア、欧州が続き、それから衝撃波は北米と南米市場を襲った」
2008年9月16日、アラブニュースの一面に掲載されたハリル・ハンウェアの記事より。
数年前の攻撃と同様に、GFCはニューヨークの「グラウンド・ゼロ」を襲った。ウォール街の「宇宙の支配者」たちは、アルカイダ攻撃やドットコムバブル崩壊などの小波乱から立ち直り、投資すべく他人の資本を山のように積み上げていた。
アメリカンドリーム―家、車数台、場所によっては船もかもしれない―は手の届くところにあった。全てクレジットで購入したのだ。そして、ウォール街は革命的な資金調達方法を生み出していた。
すべての信用は、「担保付き債務」(CDO)にまとめられ、投資可能な商品として販売され、大企業間で取引されるのだが、これらの企業はもちろんもちろん「大きすぎて潰れない」
しかし,2007 年の夏までには,「サブプライム」と呼ばれる住宅ローン市場は深刻な苦境に陥っていた。CDOにまとめられたローンは、バスケット内の最も危険な住宅ローン程度の価値しかなかった。
これが米国の不動産市場にとって脅威以上のものであることを示す最初の兆候は、ウォール街の「貴族」銀行の一つであるメリルリンチが55億ドルという衝撃的な損失を被った時であった。
株式市場がこの伝染病に感染し、株価は数ヶ月間で50%下落した。米国メインストリートの「パパママ」ビジネスにとっては、資本と年金がウォール街での血祭りで吹き飛んでしまったのだった。
Key Dates
1
ウォール街の投資銀行大手メリルリンチが大赤字を記録、米国不動産市場の危機が金融システム全体に及んでいる証拠となる。同銀行は、最終的にバンク・オブ・アメリカに売却され、破産から救済された。
2
ダウ工業株平均株価は7000ポイントに達し、過去4ヶ月間で50%の下落を記録した。世界最大の株式市場で、危機が本格化する。
3
ウォール街の「貴族」銀行の一つであるリーマン・ブラザーズの破綻が、世界中に衝撃を広げ、米国不動産市場の問題を世界的な金融危機に変質された。ある観察者は、これを「9/11と同等の金融危機」と呼んだ。
4
世界銀行が、世界の経済活動は数年間で3%近く減少し、第二次世界大戦以来初の落ち込みになると警告する。金融危機は世界経済に影響を与えており、第二の「大恐慌」の脅威が迫っている。

5
パーム・ジュメイラの生みの親であり、「ドバイ株式会社」を構成する政府系コングロマリットの中でもおそらく最も有名なドバイ・ワールドが、最大630億ドルの借金を返済できない見込みだと述べる。ドバイは、最終的にアブダビからの200億ドルの金融支援を受けて、国際銀行との債務再交渉に臨むこととなる。

6
世界的な景気後退に終止符が打たれ、原油は1バレル130ドルを超え、金融危機前の好景気以来の高値を更新。2014年夏の供給過剰ショックまでは、一貫して1バレル100ドル超えのまま取引されている。

150年の歴史を持つ米国金融システムの柱であるリーマン・ブラザーズが破産を申請したその時、金融危機へと深化した。米国連邦政府当局がシステムの下支えのため数千億ドルを費やしたにもかかわらず、大きすぎて潰れない企業などいなかったことが判明したのだ。
世界金融システムは全面的麻痺に近い状態に陥り、信用の獲得がますます困難になった。2008年と2009年の緊急G20会議など、大規模な政府介入でなんとか回り続ける状態だった。
しかし、世界経済はショック状態のままで、主に政府の緊縮財政と多額の財政準備のおかげで信用危機を比較的順調に乗り切ってきた中東も、影響は免れなかった。中国の景気刺激策を背景に世界経済状況が改善したことから、最も重要な原油価格が急上昇した。
同地域の例外は、ドバイである。石油埋蔵量がわずかしかないドバイは、その旺盛な成長を借金で支えてきたが、2009 年後半にはこうした負債の多くを返済できないことが判明した。パーム・ジュメイラなど贅沢なプロジェクトの先頭に立ってきた政府系企業の一つドバイ・ワールドは、債務再交渉を行う間、債務返済の「停止」を求めていると債権者に伝えた。
1年に及ぶ交渉は難航したが、最終的にはドバイの債権者は支持してくれ、石油豊富なアブダビ政府は200億ドルの命綱を同胞のために提供してくれた。エコノミスト誌はこれを、「停止中だが、まだ生きている」と表現した。
米国連邦政府当局がシステムの下支えのため数千億ドルを費やしたにもかかわらず、大きすぎて潰れない企業などいなかったことが判明したのだ。
フランク・ケイン
しかし、様々な意味で、ドバイの経験はGFC以降の世界情勢を象徴するもので、現在の危機がさらに深刻化する可能性がある理由を説明している。ドバイ首長国は、債務再編・拡大を行い、一部を返済する一方で、他の債務を負ってきた。IMF によれば、ドバイの債務総額は いまだに2010 年とほぼ同水準である。
世界全体でも、借金漬けを続けている。世界の負債総額は、2008年の3倍である250兆ドルと推定されている。IMFは最新の予測で、パンデミック危機の経済的影響は1930年代の大恐慌以来最悪となる可能性があると述べた。

アラブニュースのアーカイブより、2008年9月16日のニュースを示すページ。
コロナウイルス危機は、負債要因を除けば、他の点でGFCとは異なるが、どれも楽観を許すものではない。もちろん、生命への直接的脅威があることは言うまでもなく、中国には再度救援策を成功させる余力がないのではないかという懸念がある。また、国際機関には2008年のように大惨事を回避するための効果的措置をとる能力が現在ないのではないかという懸念もある。
「世界経済は今、崩壊している」という見出しが最近、フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された。ソーキンは、次回作のために最上級形容詞の辞書を参照せねばならないだろう。
- フランク・ケインは、1987年以降、世界の大手新聞のいくつかにおいて、あらゆる金融危機を報道してきた。