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サウジの女性が運転を許された日

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05 May 2020 10:05:23 GMT9
05 May 2020 10:05:23 GMT9

モー・ギャノン 

  • 男女平等の促進につながる改革の1つとなった女性の運転解禁

まとめ:

2018年6月24日、初めて運転することが許されたサウジの女性たちがハンドルを握った。2016年ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子によって発表された「ビジョン2030」の下に一連の改革が勧められる中、翌2017年9月26日には女性の運転を解禁する勅令が下され、このような歴史的瞬間が訪れたのだ。

この決定は女性の日常生活と王国の経済に大きな影響を与えた。この取り組みにより、サウジアラビアは2020年、過去1年間で女性のエンパワメントと男女平等において、世界で最も改革が進んでいる国として世銀に評価された。

ドバイ:これは、2つの国の物語と呼べるだろう。私が初めてサウジアラビアを訪れた2018年6月20日、ドバイからジッダの事務所に到着した時点では、運転することが許されなかった。そしてその4日後、国内のすべての女性とともに、私も運転ができるようになったのだ。まるでおとぎ話のシンデレラのように、2018年6月24日の午前0時に私たちのかぼちゃは馬車へと姿を変えた。

それ以降、あまりに多くの変化があり、まるで大昔の出来事のように感じる。サウジの女性が移動する際、男性保護者の許可を必要すると定めたガーディアンシップ法は昨年8月に廃止され、外国人女性に対するアバヤやヘッドスカーフの着用義務もなくなった。そして12月には公共の場での男女分離も正式に撤廃された。もっとも、すでに男女分離に従わない人々はすでにいたが。

 

改革に対する王国の本気度を示す最初のサインとして運転が解禁された頃には、このような状況になることは想像もできなかった。サウジアラビア人の同僚であるヌール・ヌガリは、「正しい方向に100マイルも進んだ」ことを示す「驚くべき」シグナルだったと話す。

ここで、サウジアラビアが世界で唯一女性の運転を禁止していた頃に話を戻そう。ジッダ空港に到着した蒸し暑い朝、私はアバヤを身にまとい、ワクワク感と同時に一人ぼっちの外国人女性としてどのような場面に遭遇するかという恐怖を胸に、飛行機から降りた。

10年間のUAE生活で、サウジの宗教警察との経験を他の女性から聞いていた私は、ヘッドスカーフをきつく巻き、最悪の事態に備えた。

ウムラから戻った人専用の列に間違えて並んでしまい、税関職員が私の方に歩いてきた。ビザを確認すると、アラビア語を話す私の同僚に電話をして話をするからと、席について待つように言われた。「おしまいだ」「牢屋に入れられるのだ」と思った。だが、戻ってきた職員は、アラビックコーヒーとチョコレートをくれ、ゲートを通過するまで付き添ってくれた。

Arab Newsのアーカイブにある2018年6月24日の記事

「いろいろな場所でコラムを書くけれど、まさか最も重要な記事を社用車の助手席で書くことになるとは…私の横に座っている運転手はArab Newsで一緒に働く女性スタッフで、何十年も続いた女性の運転禁止令が解禁されて初めてハンドルを握る女性の1人なのです。」

2018年6月24日の特別号に掲載されたファイザル・J・アッバス編集長のコラムから

迎えに来た運転手に、ヘッドスカーフはしなくても良いと言われたので、私はそれを肩にかけて、だいぶ気持ちが落ち着いた。私はそこからジッダ・ヒルトンホテルに移動した。ロビーは「スタートレック」の宇宙船のようで、エスカレーターは螺旋階段のようにうねっていた。

それから数日間、いつも笑顔の運転手、バクシュさんがジッダのニュースルームへの通勤のお供だった。彼は手が空いているときは、いつでも私のカバンを持つといって譲らなかった。女性の運転解禁が、形ばかりのものだと主張する人には、全くそうではなかったと言いたい。1日中、移動のたびに誰かに頼らなくてはならないという状態を想像してから、免許証と車の鍵を手渡されたときに感じた自由を思い出してみて欲しい。

そういう訳で、iPhoneの時計が6月24日の12:01を回った瞬間は、単にエンジンスタートの合図ではなかったのだ。それは、サウジアラビアが古いやり方と、それがもたらす余分な荷物を捨てたときだった。

この時点で、私はこの記念すべき日の日付が刺繍された、サウジアラビア人デザイナーMoe hojaのドライビングジャケットを着て、既に社用車の運転席に座っていた。助手席に座った上司のファイザル・J・アッバスは、自身と他2人の女性スタッフの移動に、私を運転手として指名した。ニュースルームで働くサウジ人女性らは、まだ運転免許証を持っていなかったからだ。これは私だけではなく、彼らにとっても女性が運転する車に初めて乗ったという忘れられない出来事となった。

主要な日付

  • 1

    王国における女性の運転禁止を2018年6月24日に解禁するという勅令が発表された。

    Timeline Image 2017年9月26日
  • 2

    ジッダのショッピングモールに、初の女性向け自働車ショールームが開店。

    Timeline Image 2018年1月11日
  • 3

    10人の女性に初めて運転免許証が発行された。

    Timeline Image 2018年6月4日
  • 4

    王国内で女性の運転禁止が解禁されるとともに、その記念としてアシール・アル・ハマドがサウジ女性として初めてF1マシンを運転し、ル・カステレのフランスGPサーキットを回った。

    Timeline Image 2018年6月24日
  • 5

    サウジの女性レーシングドライバー、リーマ・ジュファリが英ブランズ・ハッチ・サーキットにて英国F4選手権デビューを果たした。

    Timeline Image 2019年4月6日

私たちは黒い大きなSUVで夜の道を進み、窓を開けて、赤信号では周りの驚いたサウジ人に手を振ると、彼らも親指を立て、笑顔で「グッド」と返してくれた。次の信号では、パトカーの横に並び、いよいよ実態が試されることになった。私たちは緊張と沈黙に包まれ、青信号になった瞬間息ができた。そして何も問題なく、そこから離れられた。

次の日の朝、女性が次々に運転を始めるなか、私はホテルのレンタカーデスクに行って、車を借りたいと話した。すると男性スタッフは、「それはできません」と答えた。私は彼に、「いいえ、できますよ」、「ニュースを見ていないのですか」と聞いた。

そして、その日の象徴的イメージとなった、マリカ・ファーヴルが描いた運転するサウジ女性のイラストに包んだ、Arab Newsの特別号を彼に見せた。残念ながら、それはなんの役にも立たなかった。彼の上司から、サウジアラビアの運転免許が必要だと言われたのだ。

しかしArab Newsでこのことを記事にすると、驚いたことにBudgetサウジアラビアの最高執行責任者が問題を解決するため連絡をくれた。言われた通り、海沿いの道にある営業所に向かい、国際運転免許証を見せて、私は晴れてサウジアラビアで最初に車をレンタルした外国人女性となった。

まるでおとぎ話のシンデレラのように、2018年6月24日の午前0時に私たちのかぼちゃは馬車へと姿を変えた。

モー・ギャノン

白いランドクルーザーに乗ると、通行人たちは立ち止まり、携帯で写真を撮り始めた。その夜、女友達を何人か乗せて旧市街に行ったときも、同じような反応が見られた。皆が笑顔で手を振ってくれた。そして世界の中では珍しく、男性ドライバーたちが道を譲ってくれた。

私たちは窓を開け、サウジ人シンガーTamTamがこの日のために作った歌を大音量で流した。「(歌詞)私たちの時代が来た…古い考えは捨てて、明日は私のもの。私たちは運転できる。最高速度で飛ばしましょう。私たちには夢がある。そして毎日それを叶えている…」

最初のうちに、セレブのような注目を浴びられてよかったと思う。その後、運転免許を持つ女性が増えるにつれ、それは珍しい光景ではなくなったからだ。女性の運転を許すと渋滞や事故が増えるという当初挙げられた反対意見は、今となっては大昔のばかげた考えに見える。

私の国に戻ると、サウジで運転するのはどのようなものか、「怖くないのか」と聞かれる。答えはこうだ。「他の国で運転するのと全く同じ。そしてそうあるべきだ」と。

  • モー・ギャノンはArab Newsドバイ支局の編集主任。サウジアラビアで車をレンタルした初の外国人女性。
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